近年、自社のファンづくりに取り組む企業が増えているものの、成果を上げられないケースも多い。その原因はファンを獲得するために「まず何をすべきなのか定まっていないから」と、マーケティングの専門家は「ファーストフォロワー」の獲得を提唱する。本連載では、ファンづくりに成功しているメルカリやヤッホーブルーイングなど12社への取材をもとに解説した『ファーストフォロワーのつくりかた――事例で学ぶ「製品・サービスの価値をファンと共に生み出す」ためのマーケティング』(高橋遼著/翔泳社)から、内容の一部を抜粋・再編集。
第5回目は、メルカリとファンが互いにパートナーとして活動する仕組みを紹介する。
<連載ラインアップ>
■第1回 TED Talksで話題、なぜ1人の変わり者から巨大なムーブメントが生まれたのか
■第2回 なぜ「ファーストフォロワー」は、良質なクチコミを生むことができるのか
■第3回 約3610万人の潜在顧客にどう接近? メルカリのコミュニティ戦略の見直しとは
■第4回 無印良品の熱狂的なファンが、なぜ「メルカリサロン」にスカウトされるのか
■第5回 「メルカリ先生」とつくった「メルカリ教室」は、なぜ価値を生み出すのか(本稿)
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■メルカリサロンメンバーの役割
第一弾として、メルカリでは16名のサロンメンバーと活動を開始しました。
サロンメンバーの役割として求められるのは次の4つです。
1. UGC創出
(キュレーション情報の提供や、新機能やサービスの先行案内)
2. サロンメンバーどうしによるコラボレーション
(SNSでのコラボ、サロン内インタビュー)
3. メンバーとの共創企画
(出品大会講師、メルカリコラム記事作成)
4. サロンを起点にしたメディアリレーション構築
(メディアインタビュー ※サロンメンバーにはライターも含まれているため)
まずは発信力の強そうなお客様の発掘を行い関係構築をして、コミュニティ内で提供する情報や体験に価値を感じてくれるかどうかの検証を行いました。メルカリのトレンドデータを共有し、その情報を元にSNSでクリエイティブの素材に活用してもらいます(図4-4)。これらの活動を経て、サロンメンバーおよびサロン経由のメディア露出で数百万PVを獲得するコンテンツも誕生し、これらをメルカリ独自のロジックでGMV換算して社内へ成果を報告しています。
メルカリとファンの関係も情報をgiveする側とtakeする側に分かれるのではなく、お互いがパートナーとして、メルカリの価値を広げていく活動を一緒に行うことによって、双方にメリットが生まれる設計になっているのです。
また、個人のメルカリ先生と共につくった活動の1つが「メルカリ教室」個人開催の取り組みです。これは、英語の先生が個人単位で各地に英会話教室を開くように、メルカリのやり方やコツを伝えるための教室を個人で立ち上げられるようにしました。これによってメルカリで商品を売ったことがないユーザーも、個人のメルカリ先生に商品が売れるまでサポートしてもらうしくみができていきました。その他にも、メルカリのオンライン配信講座に先生役として出演してもらうなど、さまざまな活動を通じてメルカリの価値を伝える活動を一緒に実施しています。
これらの活動はメルカリ側が搾取するようなしくみにならないように、サロンメンバー個人のプロフェッショナルなスキルを伴った活動にはコミュニティ活動の枠を超えたプロジェクト(お仕事)として、報酬をお支払いすることにしているのです。