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 近年、自社のファンづくりに取り組む企業が増えているものの、成果を上げられないケースも多い。その原因はファンを獲得するために「まず何をすべきなのか定まっていないから」と、マーケティングの専門家は「ファーストフォロワー」の獲得を提唱する。本連載では、ファンづくりに成功しているメルカリやヤッホーブルーイングなど12社への取材をもとに解説した『ファーストフォロワーのつくりかた――事例で学ぶ「製品・サービスの価値をファンと共に生み出す」ためのマーケティング』(高橋遼著/翔泳社)から、内容の一部を抜粋・再編集。

 第4回目は、潜在顧客に対する出品の動機付けをメルカリファンが担う理由、SNSユーザーの中から「メルカリサロン」のメンバーを選ぶ基準を紹介する。

<連載ラインアップ>
第1回 TED Talksで話題、なぜ1人の変わり者から巨大なムーブメントが生まれたのか
第2回  なぜ「ファーストフォロワー」は、良質なクチコミを生むことができるのか
第3回 約3610万人の潜在顧客にどう接近? メルカリのコミュニティ戦略の見直しとは
■第4回 無印良品の熱狂的なファンが、なぜ「メルカリサロン」にスカウトされるのか(本稿)
第5回 「メルカリ先生」とつくった「メルカリ教室」は、なぜ価値を生み出すのか

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■メルカリサロンで出品を動機付け

 メルカリは「出品のやり方がわからない」「発送が面倒」といったお客様の課題に対して不安を払拭する施策や出品したくなる体験を提供することは得意。これまでもさまざまな施策を打ってきました。明確に課題が顕在化しているユーザーに対しては課題解決のソリューションを提供できますが、出品に至る動機付けをいかに行っていくかは課題でした。こうした動機付けの役割をメルカリファンに担ってもらうことで、利用を後押しする評判の形成を目指していきました。

 いくら公式がメルカリを使う理由を伝えても、メンタルブロックを超えて魅力を届けることは難しいのです。

 そのような背景から、リニューアル後のメルカリサロンでは、一部のファンの活動を通じてポテンシャルユーザーに対し一緒に動機付けをしていくことを主な活動として位置付けました。

 これまではコミュニティにメルカリが好きな人が集まって、わいわいおしゃべりをして解散という流れでしたが、「売り買いの楽しさを“発信していく”コミュニティ」をコンセプトにし、コミュニティの外へ価値を広げていく活動へリニューアルしていく方針にしたのです

■誰にオファーをするか

 リニューアル後のコミュニティのメンバーは、全てメルカリ公式から直接スカウトされたメンバーで構成されています。まずは、SNS上でメルカリに関連する発信をした人を全てリストアップ。Twitter(現X)やInstagram はもちろんのこと、ブログ、TikTok、YouTubeに至るまで、あらゆるSNSのユーザーをリストアップしていきました。 次に、彼らの発信の特性を分析し、図4-3のように分類しました。

 そのなかで、一緒に活動したい人は上図の①②の象限に属するユーザーと定義。お金を稼ぐための副業の一環としてメルカリを発信している人ではなく、純粋に趣味やライフスタイルの一部としてお買い物を楽しんでいる人たちこそエンゲージメントの高いフォロワーがついていると考え、声をかけていきました。