中国・北京の夜景(出所:Pixabay)

 前回の記事(「GDPが逆転しても中国は米国を突き放せない理由」)では、2030年前後に中国は米国を抜いて世界最大の経済大国になるものの、その後は、いわゆる「中所得国の罠」によって成長が鈍化すると述べた。だが中国の成長が鈍化することは、中国の先進国化を意味しており、日本にとって必ずしも喜ぶべきことではない。後編の今回は、中国が先進国化することの影響について解説する。(加谷 珪一:経済評論家)

もはや日本経済は中国依存になっている

 米中両国の経済は、コロナ危機から急回復しており、2021年における米国の実質GDP(国内総生産)成長率はプラス5.7%、中国はプラス8.1%だった。2022年は反動から成長鈍化するとみられるものの、基礎体力として米国は1ケタ台前半の成長、中国は1ケタ台半ばの成長が持続する。

 そうなると近い将来、米中経済は逆転する可能性が高く、タイミングとしては多くの専門家が2030年前後を予想している。その後、中国は、社会が豊かになることで成長ペースが鈍化する「中所得国の罠」に陥り、高度成長はいよいよ終わりを迎える。だが、これは日本にとって安心材料とは言えない。成長ペースが鈍化するということは、中国が名実共に先進国の仲間入りすることを意味しており、中国の外交的なパワーの増大が懸念されるからだ。

 日本経済は近年、輸出主導型から消費主導型へのシフトが進んでいるが、一方で産業構造は輸出主導型のままであり、日本人の所得や賃金は輸出産業に依存している。筆者は名実ともに消費主導型経済へのシフトが必要と考えるが、国内では製造業の復活を望む声が大きい。