2月4日、北京五輪の開会式に出席した習近平主席と彭麗媛夫人(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 北京オリンピックが、連日盛り上がっている。連日の日本人選手の活躍は楽しみだが、時計の針を少し戻して、2月4日夜、「鳥巣」(ニアオチャオ)と呼ばれる北京市北郊のオリンピック・メインスタジアム。ここで行われた開会式は、日本を含む世界中に生中継された。中国が誇る張芸謀(チャン・イーモウ)監督が、「雪花」(雪の結晶)をテーマにした名演出を見せ、「史上最も美しい冬季オリンピック開会式」との評価を得た。

 ところが、2時間20分にわたった開会式で、CCTV(中国中央広播電視総台)の生中継を観ていた私が、1カ所だけ違和感を持ったシーンがあった。それは、大会組織委員会会長の蔡奇(ツァイ・チー)北京市党委書記の挨拶だった。

「習近平のための五輪」かと思わせるような組織委会長の挨拶

 習近平(シー・ジンピン)主席の開会宣言と、トーマス・バッハIOC(国際オリンピック委員会)会長の挨拶に先立って、先頭バッターとしてマイクの前に立ったが、蔡組織委会長だった。蔡会長は開口一番、福建省訛りの中国語で、こう唱えたのだ。

「尊敬する習近平主席と彭麗媛女士!」

 CCTVは、貴賓席中央に座る習近平主席と彭麗媛夫人の様子を大映しにした。蔡会長は続けた。

「習近平主席が自ら推進され、中国政府が堅強に指導する中、われわれはグリーンで、共に分かち合い、開放されて簡素であるというオリンピックを開催する理念を、実践していきます・・・」

 このように、まるで習近平主席のためのオリンピックが始まるかのような物言いだったのだ。さすがに14億の中国人にも、「はっ?」と思った人がいたと見えて、すぐさまSNS上に、「これ(英語に)翻訳してあげたら?」といった書き込みが入った。私はCCTVのネット生中継を観ていたが、NHKではどうしたのだろうか?