(北村 淳:軍事社会学者)
南シナ海での軍事的優勢を手にしつつあり台湾への軍事的威圧も恒常的に維持している中国を軍事的に牽制するため、アメリカは空母打撃群2セットを南シナ海に派遣して示威活動を展開するはずであった。ところが、F-35Cの着艦失敗と墜落という事故だけでなく墜落前後の状況がネットに流出してしまうという醜態までさらしてしまい、アメリカは対中牽制どころではなくなってしまった(前回コラム「F-35Cが着艦失敗、『世界最強』の米空母打撃群がさらした醜態」を参照)。
また同盟国日本の海上保安庁が、西沙諸島北東300マイルフィリピン西岸から170マイルの海域で引き上げ作業が完了するまでの航行注意情報を発したため、世界中に事故発生位置と引き上げ作業状況が知れわたってしまうというおまけ付きであった。
現在、米海軍は海底深く沈んでしまったF-35Cの残骸引き上げ作業を急いでいる。しかし、海洋サルベージ船を含む中国海軍艦船が現場付近に集結しているとの情報も流れており、国家機密を含んだ残骸引き上げ作業には大きなプレッシャーがかかっている。
米軍関係者の中から浮上してきた主張
このようにこれまで米海軍が表看板に掲げてきた空母艦隊による威嚇という海上からの対中牽制は、思いもよらない墜落事故のおかげで頓挫してしまった。しかし、米海軍は海中からのさらに強力(危険)な威嚇も実施している。戦略原潜(核弾道ミサイルを搭載した原子力潜水艦)による威嚇だ。