つまり、在留外国人の数が増加するに従い、日本の社会の中に、現スパイあるいは将来のスパイが紛れ込む可能性が大きくなるのである。
スパイの種類にはいろいろあるが、本稿で使用するスパイとは謀略・諜報・宣伝の工作員の総称である。謀略・諜報・宣伝については後述する。
ところで、問題は住民投票だけでない。
近年、日本の企業や大学、研究所で働く外国人も増えている。このような外国人の中に紛れ込んだスパイを通じて、安全保障上、重要な先端技術や情報が外国に流出する可能性も指摘されている。
例えば、2005年に政治亡命した在シドニー中国総領事館の一等書記官だった陳用林氏は、中国のスパイ活動について日本の週刊誌「週刊ポスト」とのインタビューで次のように語っている。
「オーストラリアには1000人ほどのスパイがいるが、日本にはより多くいるはずである。留学生や研究生、ビジネスマンなどに扮したスパイたちが、最先端の技術を盗んでいる」
そんなことはない、外国人はみんな良い人だと言う日本人がいるかもしれない。思い出してほしい。
北朝鮮の拉致事件の解決が遅れているのは、事件が発覚した当時の多くの政治家・知識人・マスコミは、まさか、国家(北朝鮮)が拉致などするわけないという思い込みがあったのではないか。
危機管理の要諦は、「まさか」でなく「もしかして」の発想で最悪のシナリオに備えることである。
さて、わが国のスパイ対策上の最大の欠点は、スパイ対策のための体制が整備されていないことである。
すなわち、スパイ防止法が制定されていない、米国のFBIや英国のMI5のような防諜組織が整備されていないことである。
本稿では、日本に在住する外国人の数の増加に対応するための国家の防諜体制の整備を提言してみた。
以下、初めに、スパイ活動とスパイ対策(防諜)の仕組みを理解する手がかりとして、旧軍の秘密戦について述べる。次に、提言としてわが国の防諜体制の整備について述べる。