スパイ行為を認めさせようという意図がありありと
「代理店の担当者は、その資金で旅程を組んでいることを認めている!」
当局によって自分が裸にされている不気味さと恐怖を実感する。
「そこから依頼を受けて、“調査活動”が目的でここへやって来たのだろう!?」
調査活動、すなわちスパイの容疑をかけて、それを認めさせようとする。中国では習近平体制になってから「反スパイ法」が制定され、日本人もその容疑ですでに拘束されている。
「なぜ、取材なら取材申請をしなかった」
「なぜ、観光と嘘をついて入国したのか」
ここへ来る前、私は西安に滞在していた。そこから高速鉄道と車を利用して「梁家河」という谷間の小さな村を訪ねていた。習近平が若い頃、下放されて暮らしていた「窯洞(ヤオトン)」と呼ばれる洞窟の住居がある場所だった。そこは、この7月からは観光地化し、入場料をとっている。習近平の生い立ち調査が目的とはいえ、これを観光ではないと言い張る中国人がいるだろうか。
その旨を伝えると警官は黙った。ところが、それまで黙っていた共産党書記が蒸し返す。
「だけど、わからないな。出版社からの送金でここまで来ているのなら、それは調査だろう!」
「そうだ。どうなんだ」