北朝鮮には「出身成分」という言葉がある(写真:AP/アフロ)

 北朝鮮には「出身成分」という言葉がある。「出身」は生まれた地域や先祖を意味し、「成分」は育ってきた環境や経歴を意味している。出身と成分に欠陥があれば党幹部になれず、出世を左右する基準である。

 それでは、北朝鮮の人事評価の基準となっている出身と成分にはどのような種類があるのだろうか。

(過去分は以下をご覧ください)
◎「北朝鮮25時(https://jbpress.ismedia.jp/search?fulltext=%E9%83%AD+%E6%96%87%E5%AE%8C%EF%BC%9A)

(郭 文完:大韓フィルム映画製作社代表)

 北朝鮮の出身は大きく二つに分けられる。生まれた地域と先祖である。地域出身者については、以前、触れたことがあるので簡単に述べたい。

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 北朝鮮は大きく平安道(ピョンアンド)地域と咸鏡道(ハムギョンド)地域、黄海道(ファンヘド)地域に分けられる。

 平安道地域の出身者は、「森の中から出てくる荒々しい虎」という意味で「猛虎出林」、咸鏡道地域の出身者は「泥の上で噛みちぎって戦う犬」、すなわち利益のために見苦しい戦いをする「泥田闘狗」、黄海道地域の出身者は「石畑を行く雄牛」、言い換えれば、忍耐強い「石田耕牛」と呼ばれている。

 最も好まれているのは平安道の出身者だ。金日成が平安道地域の出身だったことに由来する。

 最悪は咸鏡道出身だ。易姓革命の代名詞である太祖・李成桂(1392年に朝鮮を建国した始祖)が咸鏡道出身だったこと、金日成が政権に就いた時に反旗を翻した人物の大半が咸鏡道出身だったことなどが、北朝鮮当局が咸鏡道出身者の幹部登用を躊躇する理由となっている。

 そうはいっても出身地域は、党幹部の人事基準では参考程度とされており、決定的な評価基準になることはない。

 北朝鮮当局は「出身」を見る時、先祖の血統を重視する。