2021年6月18日に北京にオープンした「中国共産党歴史展覧館」のスクリーンに映し出される習近平国家主席(写真:AP/アフロ)

(藤谷 昌敏:日本戦略研究フォーラム政策提言委員・元公安調査庁金沢公安調査事務所長)

 2021年1月10日、「中国人民警察節」という記念日が制定された。これは警察活動を讃える日であり、昨年(2020年)8月には人民警察統一旗も制定された。この制定の意図は、警察組織に習近平政権への絶対忠誠を誓わせることにあると言われている。だが、それがすべてではない。

 習近平(シージンピン)の側近は、「習近平氏は、今まで外国からの投資を受けることが必要だったために、外国からの人や物や思想などが入ることを認めざるを得なかった。だが、自分の独裁体制の確立のためには、中華民族の偉大なる復興をスローガンとしてナショナリズムをあおり、人権の尊重や民主主義のような西側諸国の価値観を排斥する必要があると考えている」と主張する。すなわち、人民警察に対する顕彰と統一旗制定は、習近平思想を国民に徹底させ、西側諸国が提唱する普遍思想を排斥するために、一層の統制を図るために行ったものなのだ。

 その見方を裏付けるように、中国公安省は2021年11月20日、公安省の共産党委員会書記に習近平国家主席の側近である王小洪(ワンシャオホン)公安省次官(64歳)が就くと発表した。中国メディアは王氏が公安相に昇格し、現在の趙克志(ジャオクォージー)公安相(67歳)と同じく国務委員(副首相級)ポストも兼ねるとの観測を伝えた。公安相には近年、地方トップ経験者などが就くケースが多く、ほぼ一貫して公安畑を歩んだ王氏が内部昇格すれば異例の事態だ。習近平は来年からの3期目政権発足をにらみ、司法・警察部門での汚職摘発を進めており、内部事情を熟知する王氏の起用で警察を完全に掌握する狙いもあるとみられている(2021年11月21日付「読売新聞」)。