資料を細かく分析しているわけではないが、奇しくも大谷選手が示したように、本来は投打の両面で活躍した方がリズム的にも良いにもかかわらず、プロ球界ではいずれか一方で起用される慣習から、逆に本来の力が発揮できずに残念ながら落ちこぼれていった選手もいるのではないだろうか。

 ともあれプロとして入団すれば、どちらかに専念するしきたりから投打のいずれかの選択を迫られる。

 チームの一員となる以上、監督や球団幹部に駄々をこねることは許されなかった。この点でも本音をぶつけたのは大谷が初めてではないだろうか。

 大谷を引き受けた監督も宏量であったというべきであろう。

 高校・大学野球までのアマとプロでは考え方が異なることは言うまでもないが、これまではプロの気風、いや、ベースボール発祥の米国球界の気風と言っていいだろうが、その影響下にあった。

大谷が本場のベースボールを変える

 こうした意味で、大谷の出現は野球界、いやベースボールに一大革命をもたらす前兆となるかもしれない。

 ピッチャーの起用法がこれまでと変わり、登板した翌日から数日間は野手として出場するサイクルが自然だという流れになるかもしれないからである。

 投手は肩が大切であり、通常は投手が滑り込みで盗塁することなどは考えられないが、大谷はそれも平然とこなしている。

 走りに自信を持っていることで、2塁や3塁に余裕をもって到達できるという安心感がもたらす余裕であろう。

 このように、大谷は投手でありながら打者としても、また走者としても充分に貢献できること、しかも、走者を代えることもなくそのまま塁上に残りプレーできるという、無限の可能性を示した。