マリナーズ戦で46号本塁打を放った大谷翔平選手(10月3日、写真:ロイター/アフロ)

 2021年の球界で最も語られたのは、「OOTANI」であり、実況の時間になると「SHO TIME」ではなかっただろうか。

 大谷翔平選手の活躍を見て、筆者は二刀流ではもの足りず「三刀流」としたが、あまり流布しなかった。

 取り上げた人も、「成績を残した今季(の大谷)は改めて『二刀流』が強調された。

 中には走塁を含めて『三刀流』とする表現もあったが、漫画『ONE PIECE』のロロノア・ゾロじゃあるまいし、一刀を口にくわえるわけにもいくまい」(「産経新聞」令和3年12月12日付、別府育郎「もっと野球を語りたい」)といった表現に終わった。

 野球評論家の張本勲氏は大谷選手について「すごくやりました。打って走って投げて滑って。こんな選手はいませんよ!何やらしても一流選手」と、12月26日の「サンデーモーニング」(TBS)で語った。

「投げて打って」の二刀流では不足なのである。

 かつて、横井小楠は広く使われていた「文武両道」に異を唱えた。

 文と武の両方で優れた人物は両道であろうが、真に優れた人物はその二つが心の中で融合し合っていなければならない、それは「文武一道」というべきであろうと。

 近年は一石二鳥も表現としてもの足りないようで、効果の大きい譬えでしばしば一石三鳥や、場合によって一石五鳥とさえ表現される。

 こうした事例から見ても、大谷の大活躍は二刀流どころか三刀流でも物足りない。筆者は改めて「多刀流」が適しているとみるが、いかがであろうか。