梵鐘には澄んだ鐘の音で周りの邪気を祓って清める効用がある(高野山壇上伽藍・高野四郎:大塔の鐘・白鐘楼)

 鐘は太古の昔から宗教儀式に用いられてきた。

 それは民族や文明を超えて世界的につくられてきたため、技術や文化の比較観察に好適なものといえる。

 日本では縄文時代、音を出す用途の土鈴があり、弥生時代には洋鐘と同じ内部にぶら下げた舌という分銅のある銅鐸が作られた。

 鐘は構造的に世界各地で地域差がある。

 日本の場合、大型の鐘では建物に吊るした鐘に撞木(しゅもく)を揺り動かして撞くか叩くが、西洋の鐘は舌で内面を叩いて音を出すものが一般的だ。

 日本では、かつて鐘は嵐を呼ぶとされ船に乗せることは避けられていた。

 だが、欧州では船鐘は船内の時計代わりに利用された。また、キリスト教の布教目的のためコロンブス、マゼランなどの船は多くの鐘を積載していた。

 日本の鐘は和鐘と呼ばれ口径が狭く、音が重厚で、長い余韻を残す。

 鐘の音は、撞くことで鐘が振動する。すると内部や周囲の空気は周期的に圧力変化が生じ音の波となる。それを脳が鐘の音として認識する。

 鐘は大きいほど低い音が出て、小さいほど高い音が出る。

 和鐘には梵鐘と半鐘(はんしょう)があり、梵鐘は寺院で朝夕の勤行の合図に用いられる。半鐘は火の見櫓に用いられた。

 梵鐘を撞けば、清浄な音色が広がり、人々の心に安らぎをもたらす効果があるとされる。