フィリピンのドゥテルテ大統領。大統領選の候補者に対する「口撃」も次々に繰り出している(写真:AP/アフロ)

 2022年5月に控えたフィリピンの大統領選は、正副大統領候補の顔ぶれが出そろった。本格的な選挙キャンペーンは年明けから始まるが、それを目前にして、すでに候補者に対する中傷合戦や候補者の「薬物使用疑惑」浮上、さらには選挙関係者が被害者となる殺人事件の発生など、フィリピン特有のものものしい選挙戦が過熱しはじめている。まさに「命懸けの選挙戦」がスタートした。

「ボンボン・マルコスは影武者だ」

 世論調査で大統領候補の中で最有力視されているのが、マルコス元大統領の長男フェルナンド・マルコス・ジュニア(愛称ボンボン・マルコス)氏だ。ペアを組むことになったドゥテルテ大統領の長女でミンダナオ島ダバオ市長のサラ・ドゥテルテ氏とともに高い人気と知名度を誇っており、この2人のペアは他の候補にとって最大の脅威となっている。ところがこのボンボン・マルコス氏に関して、「実は本人ではなく、酷似した別人だ」という内容の嘆願書が提出されたというニュースが11月25日に流れた。

 これは、やはり大統領選に立候補しているティブルシオ・マルコス氏が選挙管理員会に対して提出した嘆願書で、「偽者の立候補を取りやめる」よう求めている。フィリピンメディアは、このティブルシオ氏について政治的支持基盤のない泡沫候補でありながら、「マルコス」という名を利用してボンボン・マルコス氏の支持者を混乱させることが目的との見方を伝えている。

 問題の嘆願書によると、ボンボン・マルコス氏は1975年英国に留学中に乱闘に巻き込まれて刃物で刺されてすでに死亡しており、マルコス一族がボンボン・マルコス氏によく似た「そっくりさん」を探し出して、本人が生きているように見せかけた「影武者」に仕立て上げており、「現在の人物は詐欺師である」と真面目に指摘している。