韓国の土地住宅公社(Land and Housing Corp:LH)。職員による不動産投機疑惑に揺れている(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

 10年前に、5歳の息子を連れて夫の故郷である韓国に渡った立花志音氏。息子の成長とともに韓国社会に感じた違和感を綴るコラム。今回は韓国のスクールカーストについて。住んでいるマンションの価格で、スクールカーストが決まることもあるという。

◎立花志音氏の過去の原稿は以下(https://jbpress.ismedia.jp/search/author/%E7%AB%8B%E8%8A%B1%20%E5%BF%97%E9%9F%B3)をご覧ください。

(立花 志音:在韓ライター)

 韓国の不動産バブルが止まらない。文在寅大統領は政権発足時、「住宅価格の安定」を大きな公約に掲げていたが、不動産価格は安定するどころか政権発足から4年で平均価格が2倍になった。

 投資目的の不動産購入に対する規制を次々とかけたが、ほとんど逆効果だった。不動産投資は、経済知識がなくても比較的に短期間に、そして(今のところ)高確率で利益が出るため手っ取り早い投資方法だ。

 昔の韓国では毎月の家賃を払って不動産を借りることはほとんどなく、家を借りる時は「チョンセ」と呼ばれる、まとまった保証金を預けて住んでいた。一定の保証金を払えば、家賃を払わなくてもいい方法という韓国特有の仕組みである。

 チョンセが誕生し、社会の中で広がったのは、韓国の金利が高かったことによる。家主は保証金を運用することで利益を得ることができたため、賃料をもらう必要がなかった。チョンセを預けて住宅を借りる借り主も、退去時に戻ってくるチョンセを次に引っ越す際の資金に当て込んでいた。銀行にはチョンセ用の融資も普通にあった。

 ここ15年ほどで韓国の金利が下がり、毎月の家賃を払う賃貸契約も増えてきたが、今も家賃を払って暮らすことほどもったいないことはないと思っている韓国人は多い。

 文政権の昨今は、不動産の高騰に加えて20代、30代の雇用状況が悪く、若年層や子育て世代の住居問題は深刻である。韓国政府は不動産の高騰の歯止めの一環としてLH(韓国土地住宅公社)による国営住宅の供給を進めているが、新興住宅地の高級分譲マンションの隣地にLHマンションを建設するケースが多く、そのたびに住民たちから反対の声が上がる。
 
 韓国では表向き権利や平等を訴えるが、不動産になると人が変わる、自分たちの不動産市場価格が下がるものなら、重大犯罪すらも揉み消すケースもある。

 数年前から韓国ではミックスソーシャル政策を掲げ、異なる年齢、職業、所得水準の人々が同じ地域で共生できるように勧めているが、この国では無理である。