裏切り続けたのにはワケがある?
上杉家、北条家の間で裏切りを繰り返した昌綱は、一見すると不義理な人物に見えるでしょう。ただ、彼の置かれた状況を考慮すると、独立を守る上でこうした行動を採らざるを得なかったのだろうと同情すべき点も少なくありません。
前述の通り、当時の北関東では、冬は謙信が本国の越後へ帰還した後に北条家が攻め寄せてきて、春になるとまた謙信がやって来るというのが年中行事化しています。このため、北関東の諸勢力は、上杉家、北条家のどちらかだけに与し続けるというのが難しい立場にありました。実際に昌綱ほど極端でなくとも、上杉家、北条家の間で鞍替えを繰り返した武将は少なくありません。
どちらにしろ、あの謙信と刃を交えながら所領を守り切ったという点で、昌綱はやはりただ者ではないでしょう。
なお筆者としては、常に生きるか死ぬかという極限状態の戦国時代ではありますが、これほどまでに好き勝手に何度も人を裏切る昌綱を見ていると、こんな風に生きられたら楽しいだろうなと、いくらか羨ましさにも似た感情を覚えることを最後に打ち明けておきます。