連載:少子化ニッポンに必要な本物の「性」の知識
日本人は民度が高く慎ましいといわれる。確かに、お上のすることに文句は言うけれども怒りの声は上げない。
税金を湯水のように無駄遣いされようが、無責任な政権運営で将来に不安が生じようが、デモなどは滅多なことでは起きることもなく、海外のように暴動や略奪も起きない。
だが、そうした規律を保つことで蓋をされた憂鬱は静かに深く潜行し、屈折して下半身を抑圧する。
社会の緊張と人々の性的な混乱は決して無関係なものではない。
結果、セックスレスの夫婦が増大し、婚外セックスの花盛りをきたし、セクシャルハラスメントが頻発し、道徳論者的に言えば「性的乱倫」の世の中が到来しているということになる。
いつの時代も社会はなんらかの形で矛盾と緊張をはらんでいたし、いつの世にも性的な混乱は見られていた。
現在の日本社会は性的な面では確かに大きく揺れ動いているように見える。
セクハラが人権侵害にあたるという、いわば当然の認識が、いまになってようやく社会的に承認されている。
しかし、それはセクハラについての取り締まりの法律ができたことによる結果に過ぎない。
近年になって男たちが女性に対する性的な好奇心と、その愉しみに目覚めたわけではもちろんないのである。
「恋人はいるの」と口にする。ちょっとした下ネタや、忘年会においての酔った勢いで部下の女性の腰に手を回すといった行為・・・。
これらは、平成の前半くらいまでは多くの男たちは大した気の咎めを感じることなく、日本全国の至る所で日常的に行われていたはずである。