南シナ海で米軍との共同訓練に参加しているオーストラリアのフリーゲート艦「ワラムンガ」(10月11日、米海軍のサイトより)

 台湾が設定している防空識別圏(ADIZ)に、10月1日から150機ほどの中国軍機が侵入したことで、中台関係の緊張がこれまで以上に高まっている。

 中国と台湾の有事に発展してもおかしくないといった議論が散見される一方で、すぐに軍事衝突に入る可能性は低いといった冷静で一歩引いた言説もある。

 両国関係のイマを現実的に俯瞰してみたい。

 中国軍機による防空識別圏への侵入は何も今に始まったわけではない。2020年だけでも380機が侵入しており、半ば常態化してきている。

 ただ今月に入ってから、侵入する機体数が急激に増えたことで、習近平国家主席の中国・台湾の統一の野望が全面に出てきたのではないかとの見方がある。

 台湾の邱国正(チウクオチョン)国防相は10月6日、中国との緊張関係は過去40年で最悪の状態にあると述べ、両国間に偶発的な攻撃が生じるリスクが高まっているとした。

 米首都ワシントンにあるシンクタンク、ヘリテージ財団のジェームズ・ジェイ・カラファノ副所長は政治専門紙「ザ・ヒル」に寄稿して、次のように述べている。

「中国の世界戦略が変わったという証拠はほとんどない。実は、中国はいまでも『戦わずして勝つ』ことを望んでいるはずだ」

「最近の積極的な空軍力の行使は、米国と台湾に対して、将来台湾が独立しないようにという政治メッセージを送ったと解釈すべきだ」

 10月1日が中国の建国記念日である国慶節であるため、飛行回数が増したとの見方もある。