(英エコノミスト誌 2021年10月2日号)

ドイツの連邦議会選挙で第1党となって喜ぶSPDのオラフ・ショルツ氏(中央、9月27日、写真:ロイター/アフロ)

社会民主党が新政権を率いる可能性が高いが、僅差の選挙結果だけに、連立協議は難航し、時間を要する模様だ。

 9月26日午後6時。ドイツの社会民主党(SPD)がベルリン本部を置くヴィリー・ブラント・ハウスのアトリウム(吹き抜けの広間)で歓声が上がった。

 この日に行われた連邦議会選挙(総選挙)の出口調査が、SPDの勝利を示唆したからだ。

 たとえ僅差であっても、甘美な勝利だった。

 世論調査で長らく低迷していた同党は遅まきながら波に乗り、今回の選挙で得票率を25.7%に伸ばし、ライバルであるキリスト教民主同盟(CDU)とバイエルン州を地盤とする姉妹政党キリスト教社会同盟(CSU)の統一会派に1.6ポイントの差を付けた。

 アンゲラ・メルケル氏の後継首相の座を目指すSPDのオラフ・ショルツ氏は、有権者がCDU・CSUに「もう政権にとどまるべきではない、下野すべきだ」と告げたとコメントした。

明らかな敗者は政権与党

 ショルツ氏がこの点を強調したのは適切だった。なぜなら、この選挙には明らかな勝者がいないとしても、明らかな敗者はいるからだ。

 CDUの中枢であるコンラート・アデナウアー・ハウスのムードは、SPDのそれよりも明らかに暗かった。

 CDU・CSUの戦績は事前予想の最悪の結果をわずかに上回ったとはいえ、同党史上最悪の記録を大幅に塗り替えてしまった。

 メルケル党首の下で4度目にして最後の勝利を収めた2017年の選挙に比べて得票数は410万票減り、得票率は8.9ポイント落ち込んだ。

 首相職を16年間務め、次の連立政権が発足するまでその座にとどまるメルケル氏は、高い支持率を維持したまま退任することになる。だが、同氏の党はまさにボロボロだ。

 CDUはほとんどの選挙区で打ちのめされ、旧東ドイツに当たる東部の諸州では特にひどい結果に終わった。

 政党別では、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」と左派強硬派の左派党の2党を除くすべての党に票を奪われた。特にSPDには、高齢者の票を中心に130万票以上流れていった。

 CDUの現職閣僚が小選挙区で敗れるケースも相次いだ(ただし、ドイツは小選挙区と比例代表の併用制であるため、比例代表で復活すると見られる)。