ここで判然としないのは、「誹謗中傷と感じられるできごと」がなにを指すのか、あるいはどの範疇を指すのか、わからないことにある。「感じられる」というのであるから、たとえばそれが「諫言」の類であるとしても「誹謗中傷」と感じれば、心の病の原因となっていることになる。これではまるで、眞子さまのご結婚や婚約者の小室さんに対する自由闊達な意見は、本人のお心持ち次第ですべてが「誹謗中傷」とされてもおかしくはない。
その上で、改善策についてこう言及する。
「結婚されることで、眞子内親王殿下のご結婚に関する、ご自身とご家族及びお相手とお相手のご家族に対する誹謗中傷と感じられるできごとがなくなれば、『複雑性PTSD』の改善が進むと考えられます。
ご結婚について、周囲の方々からの温かい見守りがあれば、ご健康の回復がさらに速やかに進むものと考えられます」
これでは、すべての言及を止めろと表明しているのに等しい。すべてが止めば「感じられるできごと」もなくなるからだ。もっと言えば、批判を許さぬ、体のいい言論封殺だ。
小室家の借金トラブルがなければ世論もこんなに騒然としない
精神医学は、一般の外科や内科とは違う特異な分野だ。外科ならば、骨が折れた、出血した箇所を眼で見て治療すればよい。内科ならば、どうしてお腹が痛いのか、特定することができる。つまり、症状の出た場所と原因を目で見て、確認して治すことができる。だが、精神医学の場合、明らかな脳の損傷などによる「外因性」をのぞいて、「心因性」「内因性」とされるものは、どこが悪いのか、はっきりと目で見て確認することができない。はっきりしないだけに、刑事裁判では被告人の責任能力を問う精神鑑定が複数の意見に分かれることも希ではない。それだけに医師の判断によるところも大きい。
眞子さまの場合だと、複雑性PTSDの原因が「誹謗中傷と感じられるできごと」にあるとされるが、他の医師であれば、もっと違った分析と処置が施されてもおかしくはないはずだ。
文書の中にも「2018〜19年頃から」症状がでたことが明示されていることからすれば、それは小室さんの家族が抱える「借金トラブル」が引き金になって、世間を騒がせた時期と重なる。それがあって、これだけの結婚に関すること、相手のこと、その家族のことに対する批判や報道も増えたはずだ。とすれば、小室さん側がこの「借金トラブル」を解決さえすれば、「誹謗中傷と感じられるできごと」も格段に減るはずだ。まずは、そこにメスを入れるべきはずである。それに関しては、秋篠宮様も会見で言及されたと承知している。「誹謗中傷と感じられるできごと」をすべて取り除け、言及させるなというのは、小さなながん細胞が見つかったからと、臓器をすべて取り除いてしまうのといっしょだ。
それ以前にこの同じ医師が、いまも眞子さまが公務を行っていることから「判断力には影響が生じておりません」「結婚の準備を進めることにも支障はありません」と言及していることからして、本当に「複雑性PTSD」なのか、その診断からして大袈裟にすぎるのではないか、という疑念も浮かぶ。