今年4月16日の日米首脳会談(写真:AP/アフロ)

退陣を知ったバイデン氏は菅氏に電話した?

 菅義偉首相が9月下旬に米国訪問することが決まった。

 退陣が決まっている「レイムダック」の菅氏が訪米すると聞いたワシントンの日米関係者は耳を疑った。

 米国の知日派の一人ですら、筆者に「悪い冗談はよせよ」(It does not pass the laugh test)とせせら笑った。

「バイデン氏がどうしても来てほしい、と言っている」との続報にさらに驚いた。バイデン氏はなぜ、菅氏とまた会いたがっているのか。

 だがすべて事実だった。その背景について米国務省関係者B氏がこう説明する。

「菅氏が辞めると知って一番驚いたのはバイデン氏だったはずだ。去る3月、日米両国とオーストラリア、インドの4カ国(通称クアッド、Quad)がオンライン形式で首脳会議を行った際に、4カ国は年内に対面会議をすることで合意していたからだ」

「それなのに菅氏はどうして政権を放り投げたのか。無責任ではないか、とバイデン氏は頭にきたようだ」

「その後、側近から菅氏が自民党総裁の無投票再選戦略に失敗、党内の求心力も低下し、総裁選出馬を断念せざるを得なくなったことを聞いた」

「バイデン氏にとっては青天の霹靂(へきれき)だった。菅政権は短命に終わるだろうが、これほど早く瓦解するとは思っていなかった」

「確証は掴んでいないが、私の手元に入ってきた情報によると、菅氏は某日、バイデン氏に電話をし、退陣を決めた経緯を説明したらしい」

「そこでバイデン氏は、『クアッド初の対面首脳会議は予定通りやりたいから出席してほしい。もう一度会おうじゃないか』と頼み込んだという」

 そう言われてみれば、9月3日以降の菅氏自身、退陣に向けた残り1カ月の政治日程には「含み」を持たせていた。

 菅氏は、3日の党臨時役員会でこう切り出した。