上海浦東国際空港のターミナル(資料写真)

(山田 珠世:上海在住コラムニスト)

 先日、中学生3年生の息子が突然「僕、騙されたかもしれない」と言い出した。

 上海の自宅近くで、子ども連れの女性に「お金がなくて困っている」と声を掛けられ、通信アプリ「微信(ウィーチャット)」でお金を送金してあげたのだという。「どう考えても詐欺でしょ!」と言うと、「まったく疑いもしなかった」と声を落とした。

 経緯を聞くと、「上海浦東空港で荷物をなくしたと言われた。これから荷物を探しに空港に行きたいけどお金がない、と困った様子だった」という。

 そのときは女性を助けたい一心だったので何も考えなかったが、女性と別れてからやり取りを冷静に思い返してみると、「騙されたのかもしれない」と思えてきたらしい。

 息子はお金を「貸した」のではない。「恵んだ」のだ。おまけに金額は400元(約6000円)である。「空港まで地下鉄に乗って行くなら、そんなにお金はいらないでしょう。なぜ400元も渡したの?」と聞くと、「空港に行く前に子どもにご飯を食べさせたいと言っていたから」だという。

 息子によると、相手が子連れの女性だから信用してしまった、小柄な女性でとても嘘をつく人には思えない感じだった、子供もかわいそうに思えた、ということらしい。