(山田 珠世:上海在住コラムニスト)
先日、中国人の夫の親戚に不幸があり、上海市内で行われた葬儀に参加した。中学生の長男が学校を早退するのを待ち、一緒に葬儀場の入り口に到着したのは葬儀開始の10分前だった。
慌てて葬儀場の門から入ろうとしたとき、どこからともなく駆け寄ってきた男性に「〇〇さんの葬儀?」と尋ねられた。そうです、と答えた私たちに男性は、「大往生だったね」などと話しかけながら、私たち2人を誘導しようとした。
男性が死者の名前を知っていたことからてっきり葬儀場関係者だと思った私たちは、「時間がないので助かった」と男性についていった。ところが、男性は「こっちこっち」と道路を渡って、事前に夫から聞いていた葬儀場とは別の方向に歩き始めた。
私たちは「葬儀場は別の場所だったのか」などと考えながら男性についていった。男性は歩きながら、「亡くなった人とはどんな関係?」「じゃあ、あなたから見ると誰に当たるの?」などと質問してくる。長男が男性の問いに答えているのを見ながら「何かが違う」と感じたそのとき、男性は小さな門構えのお店のようなところに入って行った。よく見ると、葬儀用の供花(きょうか)が所狭しと並んでいる。