海上自衛隊の「ひゅうが」型護衛艦(海上自衛隊のサイトより)

 米国のシンクタンクであるランド研究所は、防衛省・自衛隊にとって衝撃的な論文を最近発表した。

 この論文*1https://www.rand.org/pubs/perspectives/PEA1157-1.html)は、「将来の戦争に大きな影響を与える新興技術分野の数と多様性を考えると、防衛省・自衛隊が技術開発に資源を投資する最善の方法を決定する際に課題に直面する。この論文の分析はその選択に情報を与え、日本が将来の敵からの攻撃を適切に阻止し、対処することを可能にする」ことを目的にしている。

 一読して、なんとも上から目線の、防衛省・自衛隊を子供扱いにしたような論文ではあるが、記述されている内容は荒唐無稽なものではなく、妥当なものだ。

 私も自衛隊OBとして、ランド論文と同様の主張をしてきたために、同意せざるを得ない内容である。

 そもそも、ランド研究所からこのような屈辱的な論文を突き付けられた根本原因は、防衛省・自衛隊の研究開発体制、特に防衛装備庁が機能していないからだ。

 防衛装備庁は、2015年10月1日に防衛省・自衛隊の様々な旧組織を統合改編する形で「防衛装備品の開発・取得・輸出を一元的に担う機関」として設立されたが、うまく機能していないことをランド研究所はよく知っている。

 この問題を議論したら大論文になるので、本稿においては、ランド論文の要旨を紹介するにとどめることにする。

 なお、「マルチドメイン防衛軍(Multi-Domain Defense Force)」とは、米陸軍が主張する作戦構想である「マルチドメイン作戦(複数領域作戦)」が遂行できる部隊のことである。

 ここにもランド研究所の自衛隊に対する押し付けがある。以下は、ランド論文の抄訳だ。

1=“Preparing Japan’s Multi-Domain Defense Force for the Future Battlespace Using Emerging Technologies”