――多くの重大な疾患、しかも脳から腎臓まで病気にならないようにする、なっても治してくれるすごい存在ですね。
宮崎 AIMはがん細胞でも死んだ細胞でも表面にベタッと貼り付いてマクロファージなど貪食細胞に食べさせるだけという、極めてシンプルな働きをするタンパク質です。正常に機能している細胞には貼り付かないので、貪食細胞は素通りする。私たちの体内ではこのような掃除が静かに日々行われていて、ある程度までは腎臓病にもがんにもアルツハイマーにもならずに生きているわけです。
病気はゴミが溜まるスピードとそれを掃除するスピードのせめぎ合いで起こり、AIMの能力を超える勢いでゴミが溜まるとがんができたり腎不全になったりすると考えられるのですね。普段からAIMがしっかり働けるようにしておけば、ゴミは溜まらないから大きな病気にならない、あるいはだんだん治っていくという単純なメカニズムなのです。
猫のAIMは働けないようになっている!
――猫もAIMは持っているのですよね。
宮崎 猫は、なぜか先天的にAIMがIgM五量体から外れなくなっていて、ゴミが溜まってもまったく掃除ができないのです。IgM五量体という空母に搭載された偵察機だという例を挙げましたが、ゴミのある体内を空母がパトロールしていても偵察機AIMが飛び立てないようにがっちり固定されているのです。ちょっとしたアミノ酸配列の違いによるのですが。
――では、猫のAIMは何もやってないのですか? 腎臓にだけ働かないのではなく?
宮崎 おそらく、何もやってないのだと思います。猫の体内のゴミは蓄積する一方なので、脂肪肝になっていることが多いですし、アルツハイマー病も発症しているようなのです。飼育下のツシマヤマネコやチーターがアルツハイマー病を発症しているという記事を読んだことがあります。