イラスト:近藤慎太郎

 前回記事「絶対に言ってはならない、うつ状態の人に対する3つのタブー」で、うつ病の治療は短くても半年、長い場合は数年におよぶことを解説しました。

 治療の中で重要な柱となるのは「薬物療法」ですが、それに負けず劣らず重要だと考えられているのが「認知行動療法」です。

 認知行動療法とは、いつもの固定的な「認知(ものごとの捉え方)」を変えることによって「行動」自体も変え、結果的に気持ちを楽にしていくという治療法です。簡単に言うと、「私は起きたことをこう解釈して苦しんでいるけど、違う解釈もあるんじゃない?」と考える練習をするということです。

 ものごとの捉え方が偏っていたり、硬直していたりすることが、うつ病の発症に大きく関与します。認知行動療法を通して、「ものごとの捉え方に柔軟性や幅を持たせよう」というのが基本的な考え方です。

「そんなよくある自己啓発的な発想で、病気に効果があるの?」と疑問に思う人もいるかもしれません。それが、十分にあるのです。うつ病だけでなく、睡眠障害や不安障害などでも効果を認められており、特に欧米では薬物療法より優先されることもあるほどです。

 治療としての認知行動療法は原則的に一人でやるものではなく、医師や臨床心理士のしっかりとしたサポートのもとに行います。とはいえ、決して難解なことではありません。哲学的な思考も、禅のような精神的な修練も必要としないのです。最も簡単な認知行動療法の例を挙げてみましょう。