7月15日、ジャカルタ郊外の病院。病床不足のため救急病棟の外に設置された仮設テントでも患者の治療にあたっている(写真:ロイター/アフロ)

 新型コロナの感染者および感染死者が急増中のインドネシアで、在留日本人の間で、「一時帰国」や「日本でのワクチン接種」を希望する声が強まっている。だが、インドネシア「脱出」の手段が見つからず、在留日本人は不安と苦悩に直面している。

 現地ジャカルタの日本大使館は連日のように在留日本人に対して「連絡」を発して、外務省からの情報とともにインドネシアの感染防止対策の詳細を伝える努力を続けているのだが、当の大使館員の間にも疲労感が広がっているという。

民間企業に政府が遅れをとったインドネシア脱出用の「特別便」手配

 そうした中、7月13日、インドネシアの在留日本人でコロナ感染死者数が増えていることに関連して茂木敏充外相が「日本の航空会社が特別便を就航させて、邦人を帰国させることができるようにするなど、政府内で必要な検討・調整を行ってきているところ」と発言、政府主導による「在留邦人救出」に現実味が出てきた。

 さらに同日夕方、加藤勝信官房長官が会見で「明日、在留邦人が日系航空会社の特別便で帰国予定のところ、政府としてもこれを支援していきたい」と発言。このニュースに、一時帰国を熱望するインドネシア在住日本人の期待は最高潮に達した。

 ところが、加藤官房長官が会見で触れた「特別便」は、実は清水建設が自社社員と家族を帰国させるために1カ月ほど前から全日空と交渉して用意した「特別便」だった。実際、14日にジャカルタ発・成田着の「特別便」が運航され、清水建設関係者52人が帰国の途についた。

 結局、勘違いとはいえ、同社関係者以外のインドネシア在留の日本人に落胆と失望が広がる結果となってしまった。