「国民が怒らないから政府は国民を無視する」
また、河野規制改革相は「ワクチン接種で妊婦が不妊になるという話はデマだ」と語っているが、米国では「可能性としてある」という認識なので、「何を馬鹿な」と感じたとのことである。
いずれにせよ、五輪開始までにワクチン接種がさほど進まないことは既に判明している。このようにコロナ対策が全くうまくいっていないのに、なぜ日本人はここまで馬鹿にされても怒らないのか、日本のことをよく知っている彼らにしてもわからないようだ。
「日本人は長いものに巻かれろだから」という説明も成り立つが、コロナは命に関わる問題であり、それだけでは説明がつかないと真顔で語っていた。
BBCは、1カ月前には8割の日本人が東京五輪の中止を求めていたが、ここにきて3割程度に減っているのは「仕方がない」という雰囲気に流される日本人の性格があるという趣旨の報道をしていたが、本当にそうなのだろうか。
そして、「国民が怒らないから政府は国民を無視するのだ」と彼らは言う。米国人にとって、日本人は中国共産党を独裁者と批判するのに、なぜ日本政府がそのような傾向を帯びてきても止めようとしないかが不思議でならないのだ。確かに、米国だったらデモが起きているだろう。
彼らの意見で興味深かったのは、五輪を有観客で実施する宮城県、静岡県の知事に対する見方だ。
有観客で実施すれば、当然のことながら東京や大阪などコロナ禍の深刻なエリアから観客が来る。それが見えているのに、どの程度の過密状況になるかを科学的に検証せず、感染者が県内に来ることを認めるリスクをそれぞれの知事が考えているようには思えない点があり得ないという。
筆者は彼らに、コロナ禍での東京五輪開催については、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長も基本的には否定的だということを説明した(誰もが知っていたのだが)。また、東京五輪・パラリンピック組織委員会の武藤敏郎事務総長の「無観客では赤字になるということも覚悟しなければならない」というコメントと、「経済効果はない」という西村経済担当大臣のコメントもそれぞれ伝えた。
すると、彼らは日本政府と感染症学者のコロナに対する評価が異なるという点を指摘した上で(多くの日本人はもちろん知っている)、有観客での開催を主張する知事はその科学的根拠を示していないと述べた。多くの感染症学者が危険性を強調している中で有観客にするのであれば、その根拠を示すべきだという主張である。
中でも興味深い意見だったのは、「今がステージ2だから」というのは良心のある政治家なら絶対に口にしないだろう、というものだ。そもそも日本はデータを正しく発表するのではなく、自分たちの都合のいい形で出す傾向が強い。それゆえに、「ステージ2」という評価を科学的な理由として持ち出すのはどうかという疑問である。
逆を言えば、「ステージ2」が突如として「ステージ4」になるリスクがどういう時に顕現化するかを語るべきなのだが、全くそれがない。
そして、彼らは言う。有観客を決めた知事が間違えてはならないのは、知事選挙で彼ら選んだ時は、コロナがこんなに日本で危険な状況になることを誰も考えなかったという点である。緊急事態対応ができる知事なのか、県民の安全を考える知事なのかという点について県民は判断していない。その知事が科学的な根拠を示すことなく権限を行使するのはおかしいという理解だ。