欧州委員会のフォンデアライエン委員長とバイデン米大統領(写真:ロイター/アフロ)

(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

 気候変動対策の流れを国際的にリードしたい欧州連合(EU)は7月14日、いわゆる「パリ協定」で掲げられた目標の達成を目指す関連法案を発表した。その中には「炭素国境調整メカニズム(CBAM)」と命名された仕組みの素案が含まれている。このCBAMは「国際炭素税」(正確には「国際炭素調整」)と呼ばれるものだ。

 国際炭素税とは、気候変動対策を採る国が同対策の不十分な国からの輸入品に対して課税を行うことを意味する。EUの域内市場では、企業活動は気候変動対策に配慮して行われる。つまり、域内で生産されるモノやサービスには気候変動対策分のコストがかかっているわけだが、輸入品にはそうしたコストがかかっていない場合がほとんどである。

 つまり、域内品と輸入品の競争条件の水準(level the playing field)を平等にするため、輸入品に対して炭素税を課すというのがEUの考え方だ。同時に、国際炭素税には輸入元の国が気候変動対策に取り組むことを促す意図がある。気候変動対策が緩い国に生産拠点が移管することを防ぐ観点からも、EUはこの政策を重視している。

 とはいえ、EUはすべての輸入品に対して国際炭素税を賦課しようとしているわけではない。当面は一部の素材、具体的には鉄鋼、アルミニウム、セメント、電力、肥料の輸入に限定される予定だ。別の見方をすれば、これは一次産品の輸出に依存する資源国を狙い撃ちにする政策でもある。実際、多くの資源国がEUの方針に反発している。

 資源国は一様に、EUの国際炭素税が「保護主義」に基づく貿易政策であると批判する。