支持者から手渡された花束を手に微笑むアウン・サン・スー・チーさん。2010年11月撮影(写真:AP/アフロ)

 ミャンマーの民主政権で実質的な国家指導者に立場にあったアウン・サン・スー・チー国家最高顧問兼外相が、6月19日に76歳の誕生日を迎えた。スー・チーさんは2月1日の軍によるクーデターでその地位を奪われ、現在も身柄を拘束された状態にある。

 首都ネピドーの自宅で拘束された後に自宅軟禁されているスー・チーさんは、複数の容疑で起訴され、現在は週に1度の割合で公判に出廷する被告の身だ。担当弁護士との面会はこれまでにオンラインだけだったが、6月7日の公判前にミン・ミン・ソー弁護士が30分間だけ初めて直接面会することができたという。

 その際にスー・チーさんは、「全ての国民は健康に留意して過ごすように」と国民へのメッセージをミン・ミン・ソー弁護士に託したという。また法廷でも堂々と軍政と闘う決意を固めているという。

 スー・チーさんは1989年のソウ・マウン軍事政権時代に自宅軟禁され、1995年には一度解放されるも、2000年に再度自宅軟禁を強いられた。その後、2010年にようやく解放されたが、その半生のほとんどは軍事政権との対峙しながらのものだった。今回、三度目の自宅軟禁という境遇にありながら、改めて法廷で国軍と「闘う姿勢」を示したことで、国民の間では、以前にも増して「スー・チー人気」が高まっている。

いわれなき罪状の数々、スー・チー被告

 ではスー・チーさんはどのような容疑で訴追されているのか。

 これまで明らかになっているスー・チーさんに対する容疑は、①「不法に外国から無線機を取得した輸出入法違反」、②「2020年11月の総選挙時にコロナ感染防止対策を怠った自然災害管理法違反」、③「免許がないのに通信機器を所持した通信法違反」、④「地方の実業家から55万ドル(約6000万円)相当の金塊を受け取った汚職法違反」が含まれているという。

 さらに5月1日には国民民主同盟(NLD)などによる反軍政活動が社会の不安定を招いたとして「扇動罪」でも追加で訴追された。いずれもいわれなき罪状である可能性が極めて濃厚だ。

 大半の容疑についてはすでに公判が始まっているが、全ての公判で判決が出るのは180日後とも言われており、裁判の長期化が懸念されている。

 その裁判でさえ、公正に進められる見通しは薄いと言える。スー・チーさんを担当するミン・ミン・ソー弁護士、キン・マウン・ゾー弁護士は、スー・チーさんとの自由な接見を裁判所から制限されている。ただ、そうした厳しい環境でも、両弁護士は懸命の弁護活動を続けているという。