(写真:つのだよしお/アフロ)

 どこまで暴走するつもりなのだろうか。東京五輪・パラリンピックの観客について日本政府が「有観客」とし、最大1万人とする方向で調整に入ったという。

 それを裏付けるようなタイミングで政府は16日の新型コロナウイルス感染症対策分科会で緊急事態宣言などが解除された場合の大規模なスポーツイベントなどについて解除後1カ月程度、観客数を「1万人」か「50%以内」のどちらか少ない方を上限とする経過措置を講じることを決めた。また同日、NHKは緊急事態宣言について沖縄を除く東京、大阪など9都道府県で20日に解除され、うち7都道府県に関しては、7月11日を期限とするまん延防止等重点措置に移行される方針を政府が固めたと報道している。

 つまりはこうした流れに準じて東京五輪も有観客で開催強行となり、上限1万人の観客数を適用しようというシナリオが、政府や東京五輪・パラリンピック大会組織委員会、JOC(日本オリンピック委員会)、開催地・東京都の思い描く“魂胆”であることは明白だ。

「無観客」匂わせつつも実は「有観客」が既定路線

 政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は、この日示されたイベント観客上限について「五輪基準」と疑われる指摘を否定。しかしながら尾身会長が有識者でありながらも蚊帳の外に置かれている現在の構図を加味すれば、近々に行われる政府、東京都、大会組織委員会、IOC(国際オリンピック委員会)、IPC(国際パラリンピック委員会)の5者協議で、その主張と意見は何ら反映されることなくスルーされるのがオチであろう。

 強行開催に未だ懐疑的なスタンスを取り続けている組織委関係者の中立派は次のように内情を打ち明ける。

「以前、(組織委の)橋本聖子会長が無観客の可能性をチラつかせるような発言をしたことがあったが、開催反対の声が圧倒的な世論にすり寄るフリを見せただけで要はハナからそのような意思はなかったということ。それが証拠に政府は頑なに無観客のカードを切ることを拒否し続け、水面下では組織委や大会運営サイドとともに何としてでも有観客と“最低でも”観客数上限1万人の実現を強行させようと入念な根回しを行っていた。この日(16日)に主要メディアを通じ、一斉にほぼ横並びで『有観客』と『上限1万人で調整』のニュースが流れたのは、それらを既成事実化させるための情報リークだ」