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 コロナ危機による企業の業績低迷を受けて、株主優待を見直すところが増えている。日本では多くの上場企業が株主優待を実施しているが、実は企業経営の原理原則からすると、株主優待というのは投資家の利益にはなっていない。優待を楽しみに投資している人も多いかもしれないが、コロナ危機をきっかけに投資基準についても見直しを行った方が、最終的に得られる利益も大きくなるはずだ。(加谷 珪一:経済評論家)

海外市場ではほとんど目にしない株主優待

 日本では4000社近くの企業が株式を上場しているが、このうち約1500社が株主優待を実施している。野村インベスター・リレーションズの調べによると、優待を実施する企業は年々増加していたが、2020年度は減少に転じたという。最大の理由はコロナ危機による業績悪化である。

 実は株主優待というのは日本独特の制度であり、海外市場ではほとんど目にすることがない。その理由は、ズバリ、株主優待は投資家にとってあまり経済合理性がないからである。つまり、株主優待というのは投資家の利益にならない仕組みであり、それゆえに、この制度を実施している企業は、海外ではほとんど見当たらないのだ。

 この話をすると怒り出す人がいるかもしれないし、多くのマネー誌が株主優待に関する大々的な特集を組んでいるので、あまり水を差すようなことは言いたくないのだが、ここは冷静になって筆者の意見を聞いてほしい。