天守だけが見どころではない

 誤解のないように断っておくけれど、筆者は浜松城をディスっているわけではない。この城の本丸周辺には、豊臣期の野面積みの石垣がよく残っている。これは、城好きなら一度は見ておきたい、大変に貴重な遺構である。天守だけが城の見どころではないのだ。それに、コンクリ製の天守閣は考証的にはアウトだが、3重の望楼型としたために、野面積みの石垣と景観的に無理なくマッチしている。遠目にカッコよく見えるのは、このためだ。

写真4:浜松城の石垣は、チャートの自然石や粗割石を使った野面積で、豊臣期の築城技術がわかる大変貴重な遺構。手前の説明板も、貴重な石垣だから大切に、と訴えている。

 余ってしまった天守台や、一つしかない石落を〝ネタ〟として楽しみながら、この城の魅力をトータルに味わってみてはいかがだろう? ごく個人的な感想を述べるなら、浜松城のコンクリ天守閣には、超美人ではないけれど元気よく頑張っているご当地アイドルみたいな、健気な可愛らしさを感じてしまう。つい、応援したくなっちゃうのだ(笑)。

写真5:古式な望楼型天守は、ワイルド感満点の野面積によく似合う。望遠レンズ特有の「くっつき効果」を利用して、カッコよく切り取ってみた。

 さて、こんな全国各地の「なんか変」な天守閣を楽しく紹介した本が、イカロス出版から発売になっている。『あやしい天守閣ベスト100城+α』(1650円)で、筆者も巻末に、あやしい一文を寄稿させていただいた。眺めているだけで楽しくなること請け合いの本なので、ご興味のある方はぜひ!

『あやしい天守閣 ベスト100城+α』かみゆ編集部・編、イカロス出版、1815円(税込)
本稿に出てくるお城用語や、お城写真のノウハウを知りたい方は、こちらもどうぞ。『1からわかる日本の城』西股総生・著、JBpress、1760円(税込)。