内モンゴル自治区シリンホトで子羊の様子を確認する羊飼い。2021年2月24日撮影(写真:REX/アフロ)

(譚 璐美:作家)

 もう30年も前のことだが、中国の内モンゴルに行ったことがある。内モンゴル自治区政府が招請した日本の経済学者のチームに通訳として随行した。

 北京から列車で12時間かけて区都・フフホトに着くと、なにやら懐かしさを覚えた。街行く人々がみな穏やかな顔つきで善良そうだ。日本人と雰囲気がよく似ている。なるほど日本人は「モンゴロイド」に分類されるだけあって、ルーツはここにあるのかと感じ入った。

内モンゴルで耳にした「さくらさくら」のメロディー

 伝統的な人類学では、20万~15万年前にアフリカ大陸で誕生したホモ・サピエンスが、アラビア半島、イランに出て世界へ拡散したうち、北ルートでアラカン山脈、ヒマラヤ山脈を越えて、ユーラシア大陸東部へと進出した人々が独自の遺伝的変異を遂げて、モンゴロイドが形成されたとされる。

 モンゴロイドは、さらに樺太を経て、日本の北海道に到達して、縄文人になった。遺伝子を解析すると、縄文人の遺伝子はアイヌ民族に強く受け継がれ、大和民族には影響が少ないとされる。日本には別ルートで到来した新モンゴロイドの弥生人もいるが、日本全体としては、北海道のアイヌ民族から沖縄の琉球民族まで含めて、少なからず縄文人の血を受け継いでいるのだという。

 モンゴロイドは黄色人種で、身長が低く、顔の彫りが浅く、一重瞼、体毛が少ないのが特徴だ。今でも新生児の中には、お尻に黒いアザのような「蒙古斑」がある子がいて、成長と共に消えるのも、そのなごりだろう。

1983年に撮影された内モンゴル自治区・ウランファの中学校の授業風景(写真:Hiroji Kubota/Magnum Photos/アフロ)