サキ大統領報道官の機内ぶら下がり会見
北朝鮮の非核化をめぐって米朝の神経戦が始まっている。
ジェン・サキ米大統領報道官が「米政府による対北朝鮮政策見直しが完了した」と公言したのは4月30日。
ジョー・バイデン大統領がフィアデルフィアに向かうエアフォース・ワンの機内で同行記者団に明かした。
ホワイトハウス報道室が出した速記録(トランスクリプト)には「Press Gaggle」(ぶら下がりブリーフリング)とある。
これは正式の記者会見ではなく、オフカメラで記者団に非公式に行うブリーフィングを意味する。
「対北朝鮮政策見直し完了」ということを正式の記者会見ではなく、機内で、しかも「ぶら下がり」で記者団に伝えたのはなぜか。なぜこのタイミングなのか。
しかもその中で、サキ報道官は完了した対北朝鮮見直しは「Calibrated, practical approach」(調整された現実的なアプローチ)と述べた。
この表現をもう少しかみ砕いて訳すとこうなる。「よく調整した、測定可能な目盛りのついた、現実的なアプローチ」
米朝交渉に携わったことのある米元高官の一人は筆者にこう解説する。
「フィアデルフィアに着く前に記者団に『完了した』ということだけを発表せよ、との指示が国家安全保障担当補佐官あたりからあったのだろう」
「しかも詳細に明かす準備はできていないのに、だ。何か、北朝鮮の動きを察知していたのだろう」
「それにしては、Calibratedとは聞きなれない表現だ。北朝鮮の核兵器を全廃させるために核兵器および関連施設が破棄されていく過程が段階ごとに測定できる目盛りをつけたアプローチという意味だろう」
「バラク・オバマ元政権やドナルド・トランプ前政権の犯した過ちは繰り返さないぞ、という決意が込められている」
「オバマ政権は『戦略的忍耐』、トランプ政権は『一発勝負』で金正恩氏に足元を見られて失敗した」
サキ発言に北朝鮮は2日後に反応した。