特にバッハ会長は現在も開催地・東京都に発令中の緊急事態宣言について「尊重している」と持ち上げたばかりか、さらに続けて「日本の社会は連帯感をもってしなやかに対応しており、大きな称賛をもっている。精神的な粘り強さと、へこたれない精神をもっている。それは歴史が証明している。逆境を乗り越えてきている。五輪も乗り越えることが可能だ。献身的な努力で未曽有のチャレンジをしている」と不気味なほどに日本全体をヨイショしまくった。

 そして最後には「(新型コロナウイルスの)リスクを最小化し、日本国民に安心してもらえる五輪になる」とも述べており、要は五輪開催反対のムードを沈静化させるため「へこたれない精神」などという陳腐な言葉で日本人の勇敢さを過剰に称賛し、何とか同調してもらおうという魂胆だったのはミエミエであり明白だ。

分科会・尾身会長は「開催議論やるべき」と警鐘

 しかし、これは案の定、完全な逆効果だった。ネット上やSNS等のコメントでも散見されるようにバッハ会長の真意はすっかり見透かされ、世の開催反対ムードを単に煽っただけで火に油を注いでしまった格好だ。

 加えてバッハ会長の「へこたれない精神」発言とそん色ないほどに多くの国民の怒りを買ったのが、橋本会長のコメントであった。

 この日は政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が衆院厚生労働委員会の場で、東京五輪・パラリンピックの開催について「組織委員会など関係者が感染のレベルや医療の逼迫状況を踏まえて議論をしっかりやるべき時期に私は来たと思います」と述べて大きな波紋を呼んだ。

4月25日、東京五輪・パラリンピック自転車競技の会場となっている伊豆ペロドロームで開催された本番を想定したテスト大会を視察する橋本聖子・組織委会長(写真:ロイター/アフロ)