(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)
東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まった2013年9月7日のアルゼンチン・ブエノスアイレスでのIOC(国際オリンピック委員会)総会。プレゼンテーションに立った滝川クリステルの言葉を覚えているだろうか。
「お・も・て・な・し」
この言葉が世界だけでなく、日本にも強烈な印象を残し、同年の新語・流行語大賞にも選ばれている。
変異株が猛威振るい始めている中での五輪開催、可能とお思いか?
では、現状はどうか。新型コロナウイルスの蔓延で1年延期された東京大会まで100日を切った。だが、とても「おもてなし」ができる状態ではない。先月には、海外からの観客の受け入れを断念している。
それどころか、2回目の緊急事態宣言の解除と前後して、都市部での1日の新規感染者数が急速に増えはじめ、4月5日には大阪、兵庫、それに宮城の3府県に「まん延防止等重点措置」が適応されると、12日には東京、京都、沖縄に、そして20日からは埼玉、千葉、神奈川、愛知にも適応される。
しかも大阪では、13日から1日の新規感染者数が5日連続で1000人を超え、16日には1209人と過去最高を記録している。1000人を超えることは、「第3波」の緊急事態宣言中にもなかったことだ。もはや「まん延防止」に失敗していることは明らかで、変異ウイルスの拡散とこれまでにない医療体制の逼迫からすれば、ここで3回目とは言え、緊急事態宣言を出さなければ、いったいいつ出すのか、わけがわからなくなる。
そのあとを追うように、東京でも着実に新規感染者が増え続けている。政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は、14日に「『第4波』と言って差し支えない」と明言。小池百合子東京都知事は15日に、「可能なかぎり東京に来ないでほしい」などと言いだし、続く16日の記者会見でも、「都との県境を越える移動は控えてほしい」「特に都外にお住まいの皆様方には、エッセンシャルワーカーなど、どうしても出勤が必要な方以外は、可能な限り東京に来ないでください」と断言している。
こんな状況で東京オリンピックの開催が現実的なのか。