米国のジョー・バイデン大統領は2020年8月、ウィスコンシン州ミルウォーキーで行われた民主党全国大会で、聴く人の心をグッとつかむ話をしている。
その日、同氏は新型コロナウイルスの影響を考慮して、デラウェア州の自宅からのオンライン参加だった。そこでこう述べた。
宇宙は米国人の心をつかむ
「民主党は米国人を再度、月へと送り込み、さらにもっと遠くの火星を目指します。NASA(米航空宇宙局)はその後、太陽系探査の段階に進む予定であり、私はその計画を支持します」
宇宙の話は過去も現在も、米国人の心をつかむという点では格好の題材であり、人の意識を未来志向にさせる最適のテーマである。
しかも、すでに演説内容の一部は具現化している。
バイデン政権が2021年1月に誕生した翌月、NASAは最新の火星探査機「パーサヴィアランス(忍耐)」を火星に着陸させている。数日以内にも、「インジェニュイティ」という小型ヘリコプターを飛行させる予定である。
火星の重力は地球の約4割で、大気も薄いためにヘリコプターが飛行できた場合、それ自体がまたニュースになる。
冒頭の民主党全国大会でバイデン氏が述べた政策綱領の内容が、奇しくも政権発足後すぐに現実化することになる。
しかしパーサヴィアランスが打ち上げられたのはドナルド・トランプ政権時代(2020年7月)であり、バイデン氏の指示によるものではない。