懲役20年が確定した朴槿恵前大統領(写真:AP/アフロ)

(田中 美蘭:韓国ライター)

 日本でもネットコミュニティの書き込みや口コミなどを通じて真偽不明の情報がひょんなことから拡散され、所謂、炎上状態となり、個人や企業などが風評被害を受けるというケースが問題化している。これに加えて、最近では「○○警察」と称されるような、他人の言動を逐一チェックし、自分の意に合わない場合はそれを正そうとする者も多く登場しており、「世知辛い世の中だ」という嘆きの声も聞こえて来る。

 ここ韓国においても、コミュニティサイトの影響力は大きく無視できない存在となっている。特に最近ではコミュニティサイトに投稿された内容が炎上し、名指しされたドラマや個人、企業などが大きな損害を被るという事例が相次いで起こっている。

 コミュニティサイトの影響力は時として政治をも突き動かす力を持つとされ、無視できない存在となってはいるが、弊害の大きさも指摘されている。

 あるドラマで、主人公が起こした問題行動の全容がコミュニティサイトに投稿され、さらにはニュースにまで取り上げられるという事態になり、主人公の上司が「コミュニティサイトにやられたら終わりだ」と頭を抱え込むシーンがある。そして、ドラマ内では会社が損害を受けたが、これは決してフィクションではなく、韓国でよくあることであるのだろう。

 それを示すかのように、先日、朝鮮日報でコミュニティサイトに端を発した炎上騒動、さらには過激な書き込みや炎上の心理について分析する記事が掲載された。ドラマや飲食店、企業などがコミュニティサイトの書き込みで炎上し、書き込まれた側と書いた側の双方が大きな代償を払うことになった事例の分析である。中でも被害が大きく知られているのはSBSのドラマ「朝鮮駆魔師」が放送中止に追い込まれた事例であろう。

 筆者は先日、別記事(「参鶏湯は中国起源」に激怒した韓国人の反中感情)でもこのドラマの放送中止について触れ、背景に現在、韓国内で高まっている中国に対する反中感情があることを指摘した。ただ、そもそものきっかけはコミュニティサイトに書き込まれた指摘であった。朝鮮時代を舞台にしたこのドラマ内で使用されていた小道具やセットが「中国風」であり、それが「歴史歪曲だ」という声が瞬く間に広がったというものだ。

 SBSが謝罪と編集・修正をした上で放送すると対応策を発表するも視聴者側の反発は収まらず、結局は放送中止という最悪の結末となった。