緊急事態制限を解除する方針を固めた菅首相(写真:つのだよしお/アフロ)

 菅首相は3月18日、専門家に対して緊急事態宣言を解除する方針を提案し、その結果を待って、3月21日の期限をもって緊急事態宣言を全面解除する方針を表明した。一方、東京都は、3月18日から21日まで午後8時以降も営業を続ける先に対するペナルティ(過料は最高30万円)をかけるとした。

 首相は、既に厚生労働省の専門家から3月17日に意見を聞いたと語っており、記者会見の様子を見る限りは、解除に自信を示している印象だ。特に、病床使用率が2週間前の50%程度から約半分になったことが大きいようだ。

 首相によれば、専門家には厚労省所属の正規の人間とそれ以外の2種類がおり、両方が解除に賛成すれば、お墨付きを得たということで、21日で解除するということである。

 首相の判断が正しいことを祈りたい。それがなければ責任問題になり、政局が始まれば日本は大混乱となりかねない。ただ、現状の判断に対して気掛かりことが二つある。

 一つは、1都3県がいかにも首相に従ったという感じであることだ。特に、東京都が最後の3日間にペナルティをかけるとしたのは小池都知事の最後の抵抗と、万一、コロナ再燃が再燃した場合の責任の所在を明確にするという発想があるように感じたのは筆者だけではあるまい。

 仮に、近い将来において3回目の緊急事態宣言となれば、世論の批判は頂点に達する可能性がある。その場合には、いよいよ都議選の結果を待って小池都知事の国政復帰という話になる芽も出てくる。

 もう一つは、首相が「解除する方向」で専門家に話を聞くというやり方の問題である。本来ならば、誰にも心を打ち明けず、ただデータと専門家判断を純粋に聞くべきである。「忖度」がここでも働くことを事前に想定していると思われても仕方あるまい。

 しかも、菅首相は「再拡大を防ぐ」としているが、どうやって再拡大を防ぐのか、それがわからない。緊急事態宣言を解除しても、実質的に自粛を要請するのでは意味がない。難しい状況の中での判断であることだけは間違いないので、3月21日までの間に考え直すという選択肢もあるだろう。