展示が中止になった「あいちトリエンナーレ2019」の企画展、「表現の不自由展・その後」(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 2020年秋から日本でも話題となった米大統領選挙での不正問題。年末には日本でも銀座で親トランプのデモが起きたが、最終的にトランプ氏は敗北を認め、バイデン氏が大統領に就任したのは読者のみなさんが知る通りだ。

 バイデン大統領の就任後、米最高裁は改めて5つの案件について取り上げた。その5つとは、(1)ペンシルベニア州と(2)ウィスコンシン州についてのトランプ弁護団が訴えたもの、(3)リン・ウッド弁護士が訴えたジョージア州のもの、(4)ケリー下院議員が訴えたペンシルベニア州のもの、(5)シドニー・パウエル氏が訴えたミシガン州のもの──である。もっとも、最高裁の判断内容は次につながる要素があり、トランプ陣営と共和党は次の選挙に期待を膨らませている。

 本稿では、米国の話を述べる前に愛知県であった「あいちトリエンナーレ2019」に絡んだ大村知事リコール事件(以後、「愛知県知事リコール事件」)について取り上げる。本件は、不正投票の問題として米大統領選挙でトランプ陣営が騒いだ内容と酷似点と決定的な違う点の二つを包含しているからだ。

 大村知事に対するリコール運動では、その成立のために必要な86万6000筆の獲得を目指したが、実際に集まったのは43万5000筆だった。「何票」ではなく「何筆」と書くのは、リコールは選挙ではなく、署名を集めることを請け負った人間(受任者と呼ぶ)が選挙管理委員会に届け出した上で、賛同者に署名してもらうため、その数を数える際には「筆で書いた数」という意味で「何筆」という表記になるらしい。

 愛知県選挙管理委員会の調査では、このうち約83%が無効、さらにそのうち約90%が同一筆跡であり、83%のうちの約48%は選挙人名簿にはない名前だったということである。現在、愛知県警が事件として調査を始めているので、この数字は増減するかもしれないが、とにかく信じがたい話である。

 ちなみに、リコールへの賛同者は、署名欄に住所氏名を記入して拇印するのが普通だが、ここで例えば「3丁目」は「三丁目」と漢数字を使う必要があり、また、どんなに長い住所などであっても枠外に少しでもはみ出てはならない。このルールから逸脱すると無効となる。このルールに抵触して無効になった例も少なくないようだ。

 また、同一筆跡の何割かが、佐賀県のある場所に集められたアルバイトの人間たちによって、どこかから持ってきた名簿にある住所氏名を書き写したものであることもわかってきた。加えて、大村知事のリコールを仕掛けた組織が愛知県の広告関連会社に署名代筆のアルバイト募集を発注したとの疑惑もあり、それに絡んだと目される常滑市議が警察の事情聴取を受けている。

 大村知事とリコール活動支援者であった河村名古屋市長は完全に対立状態にあるようで、3月1日のそれぞれの記者会見を見ても、もはや修復は不可能な印象を受ける。大村知事にしてみれば、刺客を送られたわけだから怒るのは当然と言えば当然のことだが。

 以上は、メディアに流れたものなので、興味のある方は、YouTube等で確認してもらいたい。