“奴隷契約”の実態が次々に明らかになっているコンビニ(写真:ロイター/アフロ)

(横山 優二:シード・プランニング 研究員)

 年間365日24時間営業を続けるコンビニエンスストア。そのほとんどはフランチャイズ加盟店である。しかしオーナーは、コンビニ本部との不平等な契約や抑圧的な取引慣行、長時間のシフト勤務を余儀なくされていると指摘されている。

 弁護士の中村昌典氏は約20年間、コンビニ・フランチャイズ問題に加盟店側代理人として取り組んできた。中村氏が指摘する問題の原因は、(1)コンビニ本部と加盟店の契約が“奴隷契約”といっても過言ではない不利、不公平、不平等なものであること、(2)安心してフランチャイズ加盟店になるための法規制がないことの2点だという。

 加盟店に課される高いチャージ率と会計方式、本部による不透明な会計処理、社会インフラとしてのコンビニの問題点について『コンビニはどうなる:ビジネスモデルの限界と“奴隷契約”の実態』(花伝社)の著者である中村氏に話を聞いた。(聞き手:横山優二 シード・プランニング研究員)

※記事中に中村昌典氏の動画インタビューが掲載されているので是非ご覧ください。

──2019年、24時間営業を止めて時短営業を行ったコンビニ加盟店のオーナーに対し、コンビニ本部が多額の違約金を請求した事件が報じられました。この事例を機に、コンビニの24時間営業問題や加盟店オーナーの過酷な現状が多くのメディアに取り上げられ、社会問題になりました。コンビニ加盟店オーナーの現状とその原因を教えてください。

中村昌典氏(以下、中村):初めてコンビニのフランチャイズ問題を担当したのは、2000年のことです。これほど一方(フランチャイズ本部)に有利で、他方(フランチャイズ加盟者)に不利な契約書がこの世の中にあったのか、と思うほど衝撃を受けました。

 コンビニ加盟店オーナーは個人自営業者です。本来、自分の店の営業時間は自由に決められるはずです。しかしコンビニの場合は、本部との契約書で原則365日24時間営業しなければいけないことになっています。これを変更するには、事前の書面による同意が必要と記載されていますが、現実にはなかなか本部は時短営業に応じようとしません。

 オーナーは慢性的な人手不足や高騰する人件費を抑えるために、深夜は一人でシフトに入り続ける。ひと月の勤務時間は、厚生労働省の過労死の認定基準をはるかに超えることも多々あります。自分の健康や命に関わる事態であっても、店を一時的に閉めることは契約違反となり、契約解除もあり得ます。そのため、ほとんど店に寝泊まりするような生活をして、自分も家族も心身ともにぎりぎりという状態の方も少なくありません。

 コンビニでは「チャージ」や「ロイヤルティ」と呼ばれるノウハウの提供や経営指導の対価を算定するために、売上総利益にチャージ率をかける「粗利分配方式」をとっています。

 例えば、売価100円のおにぎり1個の原価が70円だとします。すると粗利は30円です。この30円から、50%あるいはそれ以上の非常に高率のチャージ料を本部が先取りします。つまり売価100円、原価85円、粗利15%の商品を販売しているのと同じです。

 この高いチャージ率は昭和50年代初めに設定されたものです。当時は、経済成長期で売上高も右肩上がり、人員募集にも困らない、人件費は安く、店舗も飽和状態ではありませんでした。しかし現在は、人口の減少による人手不足と人件費の高騰、他店や他業種との競争、経済成長もなく売上高の伸びは期待できません。高いチャージ料が先取りされた結果、オーナーの手取りはますます減ってしまい、労働環境と経済状況は悪化する一方です。