給与BPOのサービスメニューとサービス範囲の例

 では、給与BPOとはいったいどのようなサービスをしてくれるのでしょうか。給与BPOで対応できる給与計算周辺業務はさまざまで、BPOベンダーによってかなりの幅があります。

 以下は給与BPOの最大公約数的なサービスメニューになります。給与計算以外は「オプション(=追加料金)」であることが多いです。

図2:給与BPOで対応可能なサービス


 以上、代表的なものをあげました。基本の給与計算サービスを軸に、これらの中で必要なオプションを選択していくことになります。

給与BPOサービス導入検討のための簡単な「コストシミュレーション」

 ここまで給与BPOのサービス内容を中心に見てきましたが、肝心な費用について触れます。給与BPOの費用は大きく以下の2つに分かれます。

図3:給与BPOに掛かる費用

 次に、初期費用とランニングコストに影響するクライアント企業の指標をあげます。

図4:コストに影響するクライアント企業の指標

 上記の2表を見ると、「従業員数」がいかに給与BPOにとって重要な指標であるかわかっていただけると思います。従業員数によってBPOベンダーの規模が決まってきますし、何より月々のランニングコストに「従業員数×月単価」というわかりやすい形で影響します。

 気になる「月単価」ですが、従業員1名当たり、おおむね1,000円/月~3,000円/月といったところでしょう。結構な幅があるように感じられるかと思いますが、これはオプションサービスをどれだけ求めるかが大きく影響します。また、一般的には従業員数のレンジが上がるほどボリュームディスカウントが効きます。

 ここで、給与BPOを検討するにあたって簡易的なコストシミュレーションをご紹介します。実際のBPO導入のコンサルティングにおいてもディスカッションのベースとして提示したことがある方法となります。

従業員数×1,000円×13ヵ月

「1,000円」とは、前述した給与計算の基本サービスを受けるための最低ラインの単価です。これ以下の単価の場合もあるとは思いますが、中堅~大企業が期待するサービス(最低限のオプションも含む)を受けるのに、月単価1,000円を切ることはまずないとみて下さい。

 式の最後の「13ヵ月」の意味ですが、年末調整がある12月は2倍の労力がかかるので、2ヵ月分とカウントしています。ただし、これはシミュレーションのための方便とご理解下さい。

 もしこの計算式で得られたコスト以下で給与計算業務を賄えているのであれば、コストメリットを求めての給与BPO導入は検討する必要はないと思います。

 例えば8,000名の従業員の給与業務を10名体制で対応している会社があるとします。この会社が、「年末調整の申請チェック」から、「データ作成」、「社会保険業務」など、すべての給与業務を社内で行っていると仮定すると、会社が給与BPOを導入した場合にコストが下がるかどうかをシミュレーションしてみます。

図6:コストシミュレーション1:10名体制で8,000人に対応している場合

 このように、最低限のサービスを想定したシミュレーションでもペイしない(=社内で効率的に運用ができている)ので、少なくとも「コスト削減」を目的とした給与BPOの導入は効果を得られる可能性が低いことがわかります。

 もちろん、上図のように単純な話はほとんどありませんが、社会保険業務や年末調整なども含めても、自社の作業はこの概算以下で回っているのであれば、あまり検討の余地はない場合が多いです。反対に、概算の方が安いという結果が出た場合は、単価を上げていき、どこまでが限界かを見極めて下さい。今の運用コストで賄っている給与関連業務がその単価の範囲内でBPOできるのであれば、検討に値します。

 先ほどの企業例を用いて、再度シミュレーションします。今度は、給与チームの人数を倍の20名とします。ここでは、制度の異なるグループ10社・従業員8,000人の給与計算をグループ内のシェアード業務専門会社で、各社につき正副2名の担当者を置いてオペレーションしている、と仮定します。

図7:コストシミュレーション2:20名体制で8,000人に対応している場合

 今度は、給与BPOを導入したほうが年間コストは下がる、という結果が出ました。ただし、現在賄っているすべての給与業務を「月単価1,000円」のサービスでは賄えないでしょうから、まだ現状の方が安い可能性が高いです。

 例えば、年末調整の申請書チェックや社会保険ロジメントに関する業務もアウトソーシングすることにより、月単価が倍の2,000円となる場合は、給与BPO導入時の年間コストは2.26億円(8,000人×2,000円×13ヵ月+1,800万円)となり、シェアードを続けた方が安い結果となります。この例の場合だと、「月単価1,500円前後」に抑えられて初めて、現行運用のコストに近づきます。

 このような簡易的なシミュレーションを用いることで現行の運用コストより大きく下げられる余地がありそうであれば、BPOを検討していくのもひとつの方法です。

 また、現状より多少コストが増えても、より付加価値を意識した人材配置のためにBPO導入するという考え方もありますので、そこは各社が「BPOに求めるもの」と「コスト」のバランスで判断することとなります。