(PanAsiaNews:大塚 智彦)
イスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を巡り、授業で風刺画を取り上げたフランス人中学校教師がイスラム教過激派とみられる容疑者に殺害される事件が起きたフランスに対する反発が、中東各国やトルコなどのイスラム国で起きている。
そしてその動きは東南アジアのイスラム教国マレーシアや世界最大のイスラム教徒人口を擁するインドネシア、さらに南西アジアのバングラデシュ(人口の約90%がイスラム教徒)やパキスタン(イスラム共和国)などにも急速に拡大している。
特にマクロン仏大統領が風刺画に関して「表現の自由」を堅持する立場から行った発言や、彼が殺害された教師にフランスの最高勲章を授与したことに対して各国のイスラム教団体などは「イスラムへの恐怖を助長するものだ」として批判を強め、それぞれの国でのフランス製品のボイコットやフランス大使館へのデモ、フランス大使を呼び出しての抗議と「反マクロン」や「反フランス」の活動が燎原の火のごとく広がっている。
東南アジアの英字メディアは「イスラモフォビア(イスラム教や教徒への偏見、恐怖症)」という言葉を使ってこうした現象を表現している。
授業の題材に使った風刺画が事件の端緒に
事の発端を振り返ってみよう。事件が起きたのは10月16日。授業でムハンマドの風刺画を生徒に見せたパリ郊外の中学校教員(47)が、イスラム過激派とされるチェチェン系ロシア人(18)に首を切られて殺害された。容疑者はその後、警察により射殺された。
ウィットの効いた風刺画が文化として定着しているフランスでは、この殺人は「表現の自由への侵害」としてとらえられた。
殺害された教員の葬儀は国葬となった。21日にパリ・ソルボンヌ大学で営まれたこの国葬で、マクロン大統領は「あなたが教えた自由を守っていく」、「あなたのような静かな英雄をイスラム過激主義者はもっていない」などと風刺画に代表される表現の自由の堅持を改めて表明しつつ、イスラム過激主義者を批判するスピーチを行い、亡くなった教員に仏最高勲章「レジオン・ドヌール」を授与した。