2020年も「最低賃金」が10月から改定されます。このコロナ禍のなか、引き下げられるのかと思いきや、ほとんどの県で最低賃金が引き上げられました。具体的には、47都道府県中40県が、1~3円の引き上げとなったのです。全国加重平均が27円アップされた2019年度と比較すると、さすがに上げ幅は小さいものでしたが、これだけ新型コロナウイルスが猛威を振るった年でも多くの県で最低賃金が引き上げられたのは、注目に値します。この最低賃金は、きちんと守らないと「罰則」も適用されるという厳しい制度です。そもそも最低賃金とは何なのか、どのように計算すればよいのかを見ていくことにしましょう。

そもそも「最低賃金」とは?

「最低賃金」の制度として「最低賃金法」という法律があり、国がそれにもとづいて賃金の最低基準を定めています。使用者は、この定められた最低賃金以上の賃金を支払う「義務」があるのです。ちなみに、最低賃金には、「地域別最低賃金」と「特定最低賃金」の2種類がありますが、今回は一般的な「地域別最低賃金」についてお話しします。

「地域別最低賃金」というのは、都道府県ごとに定められる最低賃金のことです。それぞれの都道府県で最低賃金が設定されており、事業場の所在地がどの都道府県にあるのかによって事業所の最低賃金が決まるという仕組みになります。

 そして、この最低賃金については、労使間で最低賃金に満たない賃金であることを合意していたとしても無効となり、自動的に、労使間で最低賃金と同額の取り決めをしたものとされます。もし、労働者が最低賃金未満の賃金しか支払われなかった場合、企業には差額をきちんと支払う義務があり、50万円以下の罰金が課せられることもあります。

 さて、この最低賃金の制度が適用される労働者の範囲は、産業や職種に関係なく、また、パートやアルバイトといった雇用形態にも左右されることなく、すべての労働者が対象になります。

 ただ、障がいがある方の一部といった、一般の労働者と比べて著しく労働力が低くなってしまう方に関しては、労働局長の許可を得れば、最低賃金を減額できる特例が認められます。しかし、一般的にはすべての労働者に最低賃金の額が適用されるので、たとえば派遣労働者や出来高制で働いている人も対象になるのです。

 出来高制の場合については後述しますが、出来高制の場合については後述しますが、派遣労働者については、注意すべきことがあります。最低賃金が適用されるのは「派遣元」ではなく「派遣先」の都道府県の最低賃金が採用される点です。たとえば、派遣元の会社が沖縄県(2020年度の最低賃金:792円)にあったとしても、派遣先が東京都(同:1,013円)であれば、東京都の最低賃金を基準に労働者の給料を決定する必要があるわけです。

 では、その最低賃金はどのように計算をしていくのでしょうか。