さらに夢想を続けましょう。インフラコスト抑制のためには、複数の大学が共同で地方に(あるいは都心部に)「コ・キャンパス」をつくるのもアリでしょう。企業でいう「コ・ワーキングスペース」の発想です。オフィス・シェアリングならぬ「キャンパス・シェアリング」によって、学生にとっては、キャンパスや学生寮で他大学の異質な学生とも交流できるというメリットがあります。

 新型リアル・キャンパスに100%切り替えるのではなく、「複数キャンパス」を保有するのも面白いかもしれません。企業のCP(コンティンジェンシー・プラン)の定番である、「バックアップサイト」の考え方です。都市部の大学が、都市での感染症拡大が深刻になった時でも、リアル・キャンパス活動を継続するために、新たにつくった地方キャンパスに学生たちを“疎開”させる。工場の生産ラインや銀行のシステムセンターをストップさせないためのバックアップと同じ発想です。すでに国内に複数キャンパスをもつ大規模大学であれば、キャンパス間・学部間の垣根を取り払い、キャンパスの「相互運用」をしながら、各キャンパスを徐々に「新型リアル・キャンパス」に切り替えていくのが現実的かもしれません。

 せっかく複数キャンパスを持つのであれば、“有事の疎開”のみならず、“平時”に学生が気ままに使うことを許容しても良いかもしれません。日本中にあるキャンパスを数カ月ごとに渡り歩く「ノマド・スチューデント」の誕生です。各キャンパスの名物先生のリアル授業を受けるとともに、一部の授業はオンラインで、どこにいようが継続受講できます。何よりも、いろいろな地方を知り、各地の学生寮で多彩な仲間たちに出会うことができます。

 以上のような多様なキャンパス活用法(勝手に「田園大学構想」と名づけたいと思います)を可能にするためには、授業は「リアル対面で授業しながら、その授業を同時に教室からライブ中継する」方法で行うのが現実的でしょう。

 そして、私が推す「ニュータイプ学生寮」には、寮監として“川藤幸三”的な先生に着任してもらうのはどうでしょうか。寮生活のメインは、もちろん友人や仲間との交流ですが、酸いも甘いも噛み分けた苦労人の箴言に耳を傾けるのも、思わぬセレンディピティを産む可能性を秘めています。もっとも実際の川藤選手よろしく、せっかく起用しても「空振り」に倒れる可能性もまた高い訳ですが・・・。

 さて、次回第11回にて本連載は(いったん?)お開きになります。これまでの論点を踏まえながら、大きな変化に直面している(自分も含めた)大学人に、そして何より現在・未来の学生たちにエールを送りたいと思っています。

(構成/鍋田吉郎)

(*)大学と一口に言っても、実験や実習が欠かせない工学系・医薬系や、実技が不可欠の体育系・芸術系、また人文科学系でもフィールドワークが必須の分野など、事情は様々です。本稿は、講義とゼミナールを主軸に置く人文科学系の教員から視たものとご理解ください(筆者より)。

(*)ここに記す内容は渡邊隆彦准教授個人の見解であり、渡邊准教授の所属する組織としての見解を示すものではないことをご承知おきください(ヒューモニー編集部)。

◎渡邊隆彦(わたなべ・たかひこ)
専修大学商学部 准教授。1986年東京大学工学部計数工学科卒、92年MIT経営大学院修了。三菱UFJ銀行(現)にてプロジェクトファイナンス、デリバティブ開発・トレーディング、金融制度改革、投資銀行戦略、シンジケートローン業務企画、IFRS移行プロジェクト等を担当後、三菱UFJフィナンシャル・グループ コンプライアンス統括部長、国際企画部部長を歴任。2013年4月より専修大学にて教鞭を執る。専門は国際金融、企業ガバナンス・コンプライアンス、金融規制・制度論、ファイナンス論、金融教育。国際通貨研究所客員研究員。

◎鍋田 吉郎(なべた・よしお)
ライター・漫画原作者。1987年東京大学法学部卒。日本債券信用銀行入行。退行後、フリーランス・ライターとして雑誌への寄稿、単行本の執筆・構成編集、漫画原作に携わる。取材・執筆分野は、政治、経済、ビジネス、法律、社会問題からアウトドア、芸能、スポーツ、文化まで広範囲にわたる。地方創生のアドバイザー、奨学金財団の選考委員も務める。主な著書・漫画原作は『稲盛和夫「仕事は楽しく」』(小学館)、『コンデ・コマ』(小学館ヤングサンデー全17巻)、『現在官僚系もふ』(小学館ビックコミックスピリッツ全8巻)、『学習まんが 日本の歴史』(集英社)など。

◎本稿は、「ヒューモニー」ウェブサイトに掲載された記事を転載したものです。