8月24日、フィリピン南部スールー州ホロで起きた連続爆弾テロの現場。軍用車の横には倒れた兵士の姿が見える(写真:AP/アフロ)
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(PanAsiaNews:大塚智彦)

 フィリピン南部のスールー州で8月24日、白昼の市街地で2度の爆発があり、陸軍兵士、警察官、市民など17人が犠牲となる爆弾テロが発生した。その後の治安当局の捜査で浮かび上がってきたのは、2回の爆発が共に爆弾を身にまとって自ら起爆装置で爆発させる自爆によるテロであること、そして実行犯の1人は女性であり、もう1人も女性の可能性が極めて高いことだった。

 しかも実行犯とされる女性は、過去に同地域などで自爆テロを起こしたテロリストや治安当局との銃撃戦で死亡したテロリストの妻や娘である疑いも強いという。この事件に関与したとされるフィリピンのイスラム教テロ組織「アブ・サヤフ」に関しては、今回のような「自爆したり殺害されたりしたテロリストの身内の女性」が次の自爆テロ実行犯候補として控えていること、さらには自爆テロ実行に際し多額の報奨金が組織から支払われていることなども明らかになってきた。

 犠牲者の血族によるテロとその摘発は、「報復の連鎖」を生み出すことになる。そのためドゥテルテ大統領が掲げる「テロとの戦い」を終結させることの難しさが改めて浮き彫りになったとも言える。

2件の爆弾テロはいずれも女性による自爆テロ

 事件のあらましはこうだ。

 8月24日午前11時53分、スールー州ホロ島のホロ市ワレドシティー地区セランテス通りにある食料品店兼食堂「パラダイス」の前に駐車していた陸軍のトラックの近傍で、大きな爆発があった。これによってトラック周辺にいた兵士、警察官、市民など16人が死亡、75人が負傷した。

 さらにこの爆発から約1時間後の同日午後12時57分、「パラダイス」から約100メートル離れた「マウント・カルメル大聖堂」や「フィリピン開発銀行ホロ支店」が入ったビル近くで2回目の爆発があった。こちらでも兵士1人が死亡し、兵士や警察官6人が負傷した。

 2回目の爆発は目撃証言などから、異様に上半身が膨れた服装をした女性を調べようと兵士が近づいた時に自爆したことや近くの建物の上から自爆で吹き飛んだ女性の頭部が発見、回収されたことなどから「女性の自爆テロ犯による犯行」とほぼ断定されており、現在身元の確認が続いている。

 2回目の爆破に比べて数段強力だったとされる1回目の爆発については、当初は陸軍のトラック脇に停車して運転手が立ち去ったバイクに仕掛けられた「即席爆破装置(IED)」が原因とみられていたが、その後の調査で「パラダイス」内に爆発に伴うクレーターがあったことからそこでの自爆テロによる爆発とほぼ断定、2件とも自爆テロだったことが分かってきた。