いまこの銘柄が面白い

 新型コロナウイルスの感染拡大により、世界中がほぼ同時に歴史的な経済の悪化に直面しています。今回のテーマは「旅客市場」。IATA(International Air Transport Association、国際航空運送協会)の市場分析をもとに、世界経済の現状を読み解きます。

経済活動を遮断した結果が表面化してきた

 新型コロナウイルスの感染の拡大を耳にしない日はありません。私たちの仕事や暮らしに多大な影響を与えており、職を失う人も徐々に増えています。

 7月30日、米国・商務省は4-6月期の実質GDP(速報)が年率換算で前期比▲32.9%減少したと発表しました。この水準は2008年10-12月期、リーマン・ショック直後に記録した▲8.4%(年率換算)を4倍も上回っています。

 米国ばかりでなく、同じ時期のユーロ圏は▲40%の減少と見られています。インドも▲40%、ブラジルでは▲50%超(いずれも年率換算)と予想されており、まさに世界中がほぼ同時に歴史的な経済の悪化に直面しています。

 日本もそうですが、4月から5月にかけて、各国とも都市を封鎖してウイルスの拡大を阻止しようと努めました。外出の自粛、店舗の休業が相次いで発動され、その結果が今になって表面化しています。

 過去に類を見ないほどの厳しいデータですが、それでも平静を保っていられるのは、まがりなりにも今は経済活動を再開させているからです。どの国・地域も7-9月期には年率で2ケタのプラス成長に戻る、との見通しに立っています。だからこそ国民の不満もかろうじて抑えこむことができるのだと推察されます。

 したがってどの国でも、たとえ感染第2波が襲来して患者数が急増したとしても、春先と同じように経済活動を遮断することは躊躇されます。そうしないと年後半からの経済の回復は夢と消えてしまいかねません。

国際航空便の貨物輸送量、旅客輸送人員数を考える

 経済活動を再開すれば感染症が拡大し、感染症を抑え込めば国民の生活が成り立たない。このジレンマに世界中の人々が苦しめられています。その間で果たして本当の経済はいったいどうなっているのでしょうか。「李克強指数」(りこっきょうしすう)がここでは有効だと思われます。

 「李克強指数」は、正式な経済統計ではありません。中国の首相でナンバー2の李克強(リー・クーチアン)氏がまだ地方政府の長であった頃に、その地方の経済を把握するのに使ったとされる「鉄道貨物輸送量、銀行融資残高、電力消費量」の3つのデータを指しています。

 官僚体制が徹底している中国の地方政府では、何をするにも中央の顔色ばかりうかがっているので都合のよいデータしか発表されない、という古くからの見方があります。そこで李克強氏みずからが正確な経済を把握するために、上の3つの統計データに着目したという経緯があります。

 その「李克強指数」をコロナ禍の現代社会に拡大して考える場合、国境をまたいだ電力消費量などないので、何を見ればよいでしょうか。ここではひとつの方便として、国際航空便の貨物輸送量、および国際便の旅客輸送人員数を考えてみたいと思います。