旅客市場の回復に向けて、国際線の再開が待たれる
IATA(International Air Transport Association、国際航空運送協会)は、世界中の航空会社で構成される業界団体で、120の国・地域に属する265社の航空会社が加盟しています。世界の定期的な航空便の8割強がIATAに加盟する航空会社によって運行されています。
そのIATAが毎月発表する「Air Passenger Market Analysis」(「国際旅客市場分析」)によれば、2020年6月の世界全体の旅客輸送実績は、RPKベースで季節調整値で前年比▲86.5%の減少となりました。5月の▲91.0%に続いて2か月連続で改善しています。しかしコロナ危機が発生する前と比べればまだ相当に低いレベルであることがわかります。「RPK」とは、「revenue passenger kilometers、有償旅客キロ」のことで、旅客数に輸送距離を乗じて算出した航空会社の旅客輸送実績を示す指標です。
赤線が季節調整値、IATAの資料より抜粋
現在のところ、2020年4月がボトムだったことは一目瞭然ですが、その後の回復はきわめて緩慢なものでしかありません。これはIATAの加盟航空会社の多くが国内線だけの再開にとどまっているためです。
世界の旅客市場は、国際線が64%、国内線が36%の割合で構成されています。したがって旅客市場が回復するには国際線の回復が何よりも重要です。しかしその国際線にはまだほとんど動きがありません。
例外的に、シェンゲン協定を結んでいる陸続きの欧州各国だけが徐々に国際線を再開しているにとどまり、その他の国の国際線はいまだ運行が停止されたままの状態です。
赤が国際線、青が国内線、IATAの資料より抜粋
「欧州の国際線」は市場規模で見ると世界の24.0%を占めており、世界では最も巨大な市場です。次が「アジア太平洋の国際線」で19.1%を占め、その次が「米国の国内線」で14.0%、そして「中国の国内線」の9.8%、「中東の国際線」の8.7%と続きます。
世界の「李克強指数」である国際旅客市場で確認する限り、世界経済が回復に向かうには、「欧州の国際線」を筆頭としてこのシェア順で国際線が再開されることが何よりも重要です。
IATAは最新の見通しで、国際旅客市場がコロナ危機以前の水準に戻るのは5年後の2024年になると予想しています。4月時点の見通しよりもさらに遠のきました。