中国版全地球測位システム(GPS)「北斗」が全面稼働し、北京で開かれた式典に出席した習近平国家主席(資料写真、2020年7月31日、写真:新華社/アフロ)

(ジャガンナート・パンダ:印マノハール・パリカル国防研究所 東アジアセンター センターコーディネーター兼リサーチフェロー)

 中国武漢市で最初に確認された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大は、政治や経済、そして文化の面でも国際秩序に甚大な影響をもたらしており、それはアジアも例外ではない。それでも驚くべきことは、世界全体での協調が欠如していることであり、感染が拡大している最中であっても、大国間の対立や地域紛争、外交関係の緊張が深刻化し、アジア地域に感染をもたらし続けている。

 特に中国はアジアにおける修正主義的な姿勢を取り続けており、海洋軍事面での挑発的な自己主張でインド太平洋地域の緊張を高めている。アメリカとの緊張関係や台湾への恫喝、ギャルワン渓谷でのインドとの衝突、香港国家安全維持法の制定、オーストラリアとの関係悪化、南シナ海及び東シナ海での好戦的行為、これらすべては中国が主導する新しい世界秩序の主張の一部分である。

「沖縄返還協定」以来最長の侵入

 日本の当局によると、中国の公船2隻が2020年7月、東シナ海にある日本の尖閣諸島(中国名:釣魚島)周辺に4日間で2度侵入し、それぞれ30時間、40時間も居座った。今回の中国公船による日本への領海侵犯は、アメリカが尖閣諸島の施政権を日本へ返還した1972年の「沖縄返還協定」以来最長の侵入であり、さらに重要なことは、領有権を主張する中国への対抗措置として、日本政府が尖閣諸島の3島を国有化し、島嶼を巡る緊張が著しく高まった2012年以降としても最も長いものであることだ。報道にもあるように、日本の海上保安庁の船が少なくとも一度、中国公船による日本漁船への接近を防いだという。