米スタンフォード大学は7月8日、学内にある36の運動部のうち11競技を廃部にすることを公表した。スタンフォードといえば、多数のプロ選手やオリンピアンを輩出したスポーツの強豪校であり、ビジネススクールやメディカルスクールでも全米トップレベルを誇る名門校だ。同校のような全米体育協会(NCAA)ディビジョン1(D-I)の5大カンファレンスの一つ(Pac-12)に所属するトップスクールが、運動部を多数廃部にする決断を下したことは業界に波紋を広げている。
NCAAといえば、大学スポーツのビジネス化に成功していることで知られ、スポーツ強豪校ともなれば、学内の運動部を統括する体育局(Athletic Department)の収入は2億ドル(約200億円)を超える。NCAA全体では100億ドル(約1兆円)近い市場規模があると推測されており、学生(アマチュア)スポーツとは言え、選手に報酬を支払っていない点を除けば実態はプロスポーツとそん色ない。
しかし、プロスポーツに比肩するNCAAのビジネスモデルが、実は今、大きな曲がり角に立たされている。大学スポーツがビジネスの論理を強く打ち出し過ぎた結果、本来の教育機関として求められる役割との間に抜き差しならない利益相反が生じ始めている。今回のコラムでは、岐路に立たされている米国大学スポーツの現状を解説したい。